トーリターニ

白鍵と黒鍵の間にのトーリターニのレビュー・感想・評価

白鍵と黒鍵の間に(2023年製作の映画)
3.7
ジャズに身を窶した青年が"nonchalant"を求め彷徨う不可思議な青春音楽作品。

途中まで非常に良かった。だが、終盤の『世にも奇妙な物語』的なアプローチは理解が及ばず……恐らくは「ジャズは不健康で頭がおかしくなる」という言葉通り、南博という人間が音楽に魅了されてから気が触れていった様を描いていたのでは。
"nonchalant(ノンシャラン)"とは「無頓着で投げやりなさま」とのことらしく「本物のジャズを追求しすぎるな」という先生からの警鐘でもあったのかな。

アメリカに渡ったことで「銀座のキャバレーでいろんなものに触れるくらいが幸せだった」という価値観と「生きているうちに美しいものを生み出せなかったら食ってクソするだけのくだらない人生だ」という信念との二項対立の狭間でもがいたのだろう。

池松壮亮が二役演じていたのも、理想を追い求めていた過去の自分が今の自分を殺しに来るかのような苦しいラストを描くためかな。

まさに「身を窶す」という言葉がしっくりと来るようなストーリー、嫌いにはなれない。
ただ映像としてはもっと見せ方があったようにも思えた。
とにかく池松壮亮の演技力が光っていた作品だった。