優しさとはこういうことかもしれない。
4:3の画面や紙の本、フィルムの写真、カセットテープなどアナログなもので溢れていたが大変現代的な素晴らしい作品だった。
無口だけれど愛想は良くて、
質素だけれど生まれは裕福で、
ひとりだけれどみな孤独ではなく、
いつも通りであっても、日々は彩られる。
多くは語られずとも伝わってくるストーリーは平坦なようで然に非ず、見せ方の妙には感動を覚える。
「世界は実は一つではなくて、色んな世界がたくさんある」
「今度は今度で、いまはいま」
多くを干渉することなく、何かに白黒付けるわけでもない。曖昧こそが美しく、愛おしいものだと思い出させていただいた。
忘れる勇気や失う勇気と同居して生きていく大切さを教えてくれながらも、写真やカセットテープという記録を愛する必要性も説いてくれる。だからこそラストに描かれる「木漏れ日」の解説が一層味わいを与えてくれた。
最上級の優しさに包まれる。
近年の邦画でも白眉の作品だった。