りっく

ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語のりっくのレビュー・感想・評価

3.2
物語の入れ子構造のような短編は、基本的には複数の語り部がカメラに語りかける形で進んでいく。フィックスとゆっくりとパンを繰り返すカメラの動きと、駒のようなキャラクターたちや平坦な背景を見つめていると、どこか紙芝居を読み聞かせられている印象を受ける。

小説でいう地の文も会話も、なんでもかんでも観客に語りかけることによって、それは一方的な自分語りではなく、目の前の光景や現象を実況しているような臨場感さえ生み出されているのが面白い。物語自体の面白さというよりは、それを物語ることによる効果を試行した実験作だ。
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