ヒノモト

こいびとのみつけかたのヒノモトのレビュー・感想・評価

こいびとのみつけかた(2023年製作の映画)
3.7
「婚前特急」「まともじゃないのは君も一緒」の監督・前田弘二と脚本・高田亮による最新作。

雑誌の切り抜きをポケットに詰めて妄想でいっぱいの植木屋の青年トワは、コンビニで働く園子に恋をする。園子も廃工場で暮らしながら変わった彫刻をつくる風変わりな人だった。
周囲には理解できない独特の会話で2人だけの世界を築いていくお話。

「これはメロドラマである」という一文から始まるのですが、中盤はともかく最後まで観ると意外とこの言葉が腑に落ちる不思議な味わいのある作品でした。

前作までのようなコメディではないのですが、前作の普通を追い求めて逸脱していく展開から、普通、一般通念から逸脱した2人の狭い共通項とそこからの広がり、そして周りの人たちの寄り添う気持ちの温かさに、心が洗われるようでもあり、弾き語りの場面では世の中に対する歪みや叫びがメッセージとして、突き刺さります。

メインとなるトワと園子の存在そのもの、キャラクターを体現するような演技、演出は大変素晴らしいと感じる一方で、物語全体の緩さ(寛容さ)と理解を超えたところにある行動や展開、妄想と現実の曖昧さなどのニュアンスの伝わりにくさを味と捉えるか意味不明と捉えるかで、スッパリと好みは分かれそう。

個人的には、実はダークで湿っぽい側面を持ち合わせながら、ふんわりと包み込むような優しい後味になっていることのシナリオや演出面の巧みさが恐ろしくすごい作品なのですが、物語としてのメリハリとしては弱いため、世間一般的には退屈な作品に見えてしまうもったいなさは残りました。

舞台挨拶回だったので、貴重なお話沢山聞けてよかったです。
写真は以下ブログにて公開
https://ameblo.jp/hinomoto-hertz/entry-12828024520.html
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