コマミー

のら犬のコマミーのレビュー・感想・評価

のら犬(2023年製作の映画)
3.5
【放たれたのら犬と取り残された飼い主】




※第14回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(MyFFF)上映作品






上映時間が比較的短いのに、"人間の嫌な所が一気に詰まっていた"作品だった。

主人公の"ドッグ"と"ミラレス"は"固い友情"で結ばれていたが、一方ドッグは"エルザ"という女性を好きになり、ドッグを半分"支配"していたミラレスとの友情の糸は切られ、ミラレスは嫉妬心にかられる。
次第に2人の心は離れていくが…。

というように、ミラレスは比較的大人しめのドッグを支配していたのだが、ドッグに彼女ができた事でその関係が崩壊していたその先を描いた物語なのだが、正直ミラレスのような人間は私にとって一番苦手というか少し嫌いな人物なのだが、ミラレスの気持ちも分からなくなく、私は終始複雑な心境で見ていた。
というか、ドッグとミラレスの関係性が凄いリアルな"主従関係"に見えて、この「のら犬」という邦題も結構割と納得がいってしまった。まさに飼い犬(ドッグ)と飼い主(ミラレス)で、飼い犬が他の犬(エルザ)に恋をして野に放たれてしまう…だが野に放たれた後も、"ずーと不幸な事が続いていて"もうどうしようもない気持ちにさせてくれるのが本作なのである。極めて胸が苦しくなる作品だった。ラストの展開も私なりに納得がいっておらず、要するにミラレスに対しての"不信感"が残ってしまう結果になってしまった。

もうイライラしすぎて無茶苦茶な文章になってしまったが、言いたい事は分かるだろうか?要するに"従っている立場がずーと損をする"、まるで"日本社会"のような人間関係を描いた胸糞映画だったし、舞台の田舎町の雰囲気を見ると更に納得が行った作品だった。
そんな胸糞なミラレスをここまで演じきった"ラファエル・クナール"はまさに賞賛に値するし、現に、今年の"セザール賞"で新人男優賞を受賞したらしい。彼の今後にますます期待だ。ドッグを演じたアントニー・パジョンも実に良かった。

残念ながら"とある理由"で犬好きにはオススメできないし、ドッグのような経験のある方にもトラウマになってしまう映画なのだが、ある意味"田舎町特有の友人関係"をリアルに描いた良作だし、セザール賞2部門受賞も半分納得の作品だなと感じた。
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