平山は“個”ではあるけれど、“独り”じゃない。
そして貧しくもなく、不幸でもない。
なんていうか、閉じていないんだよな。
常に他者に、自然に、開いている。
だから平山は、
「この世界には、本当にたくさんの世界がある。つながっているように見えてもつながっていない世界がある」
と言ったその先で、
人と人がさわさわとつながる世界に心が動かされるのではないか、と思った。
木の葉の間から光がゆらゆらと落ちてくる木漏れ日のような、形のない奇跡的な美しさに心が奪われてしまうように。
そしてその瞬間を待っているのでは？、と。
住む世界が違くても、誰かが、何かが、ふとしたきっかけでこちらの世界に飛び込んでくることがある。
その何とも説明がつかない不思議なつながりの中で、
人はうれしさや希望、そして時には切なさまで受け取ってしまうし、与えてしまうものなのでは？
そんな瞬間こそ、
木漏れ日みたいな一瞬の産物の美しさに満ちているのではないだろうか、とも思った。
それは、絶対的に写真に収めることはできないもので…。
しかしまあTHE TOKYO TOILETのいやらしいほどに個性豊かなデザインは、平山の素朴さや静けさを際立たせてくるなあ。
THE TOKYO TOILETのPRから始まった映画だとはいえ、大金が注ぎ込まれたであろう過剰を背負ったトイレのひとつひとつは、平山の対極にあるもの。
富と名誉を得たのだろうな、と思える妹の姿もそう。
その対比がまた、“完璧な日々とは？”と投げかけてくるような気がする。
そしてもう…役所広司の演技ってばねえ…。
こんなに素晴らしい演技に触れられて、私はとても幸せだ！
特に最後に見せる、新しい1日への希望と逃れられない切なさが次々と巡っていくあの表情…。
そこに流れるニーナ・シモンの「Feeling goog」も相まって、胸が抉られるような気持ちになった。
