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PERFECT DAYSのmaroのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.5
2023年日本公開映画で面白かった順位:164/180
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

邦画だけど、監督はドイツ人のヴィム・ベンダース。
これはなかなかに好みが分かれそうな映画だと思った。
ひとりの清掃員の日常が淡々と描かれていくだけだから。

そもそもこの映画、製作の始まりが他の映画とちょっと異なる。
ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏の次男である柳井康治氏が、2020年から行っている「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの延長線で作られたのだ。
「プロジェクトを通じてトイレの価値や意味について多くの人に知らしめ、一人ひとりが考えるきっかけを作りたい」(日経XTRENDより引用)ということで、あれこれ考えた結果、映像という形に行き着いたそうな。
インタビュー記事↓
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/casestudy/00012/01360/
その経緯を聞くと、確かになんかCMというかプロモーションビデオというかそんな雰囲気を感じる。
タッグを組んだのも電通グループの方のようだし(笑)

で、渋谷区のトイレを舞台に物語は進んでいくのだけど、これがもうタイムループかってぐらい同じ日々の繰り返し。
平山(役所広司)が朝起きて、歯を磨いて、アパートを出て自販機でコーヒーを買って、車で仕事場に向かって、終わったら銭湯に行って、浅草で一杯やって、帰宅後に読書をして寝る。
主人公が悪いやつを倒すとか、夢を叶えるとか、そういうドラマチックな展開は一切ない。
しかも、彼は極端なぐらい無口。
一瞬、しゃべれない設定なのかなと思うほど言葉を発しない。

なんだけど、その同じような毎日でも、微妙な差異がある。
天気も違えば、だらしない同僚(柄本時生)とのやり取りも日々変わる。
ゴミの中にちょっとした面白いものを見つけたり、趣味の写真で写す景色も毎回違ったり、1日として同じ日はなく、平山は常に新しい日を生きているのだ。

その中でさすがだなと思ったのは、役所広司の演技。
必要最低限のことしかしゃべらないのに、表情や仕草で喜びや驚き、悔しさを表現できる。
彼の出立を観るだけで、今何を思っているのかがわかるってのがすごいことだなと。
行きつけの小料理屋のママとのくだりはじーんときた。
もうこの平山というキャラクターは役所広司にしか務まらないと思ったわ。

ただ、先にも書いた通り、ドラマチックな展開はなく淡々とした作品ではある。
エンタメ寄りかアート寄りかと言われたら間違いなく後者で、各レビューサイトの評価が高いのも理解できるけど、個人的に好きなジャンルかと言われるとそうではないかな(笑)
この清掃員が、実はかつて特殊部隊に所属していた最強兵士で、渋谷の悪いやつらをボコボコにしていく話とかの方が僕は好きです(笑)

そんなわけで、アート系の映画が好きな人はハマるかもしれない。
CMやPVの延長のような感じなので、それを2時間以上観るっていうのは好き嫌いあるとは思うけど。
あと、ちょいちょい名バイプレーヤーの方々が出ているのも注目ポイント。
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