トイレ掃除をする男の話、賞を受賞、監督がヴィム・ベンダースとの情報で見に行った。「パーフェクト・デイズ」との題名から、ルー・リードの歌なのかな？ と思ったらまさしくそうだった。
主人公の平山は屋外にある公共トイレの清掃の仕事をしている。各場所に清掃道具を積んだミニバンというのか箱型の軽乗用車で赴く。そこに行くときにカセットテープを聴くのだ。「朝日の当たる家」「ドッグ・オブ・ザ・ベイ」、そしてベルベット・アンダーグラウンドの曲、と流れて来て、ああ、この年代、役所広司の年代のヒラヤマは若いころこれを聴いていたんだな、と思った。相棒の若い男タカシ（柄本時生）の彼女と車に乗る羽目になった時に聴くのはパティ・スミス。これを彼女が気に入ってもっていってしまう、などという場面もあった。このアルバムは自分で持っているのに曲を覚えていなかった。で、やっと「パーフェクト・デイズ」が流れる。最後もピアノ演奏だけの「パーフェクト・デイズ」が流れる。・・・とまあ、私にとっては音楽映画、のような気分になったのだった。
映画は隣の神社の掃除の音で目覚め、実生の植木鉢に霧をふき、各トイレで清掃をして、銭湯に行って、地下駅で夕食を食べ、休みにはコインランドリーに行き、行きつけのスナックに行く、これが３週間くらい延々と流れる。このヒラヤマの背景は？ との思いに、ある日姪のニコが現れ、迎えに来た妹は運転手付きの車でだ。父と何かあったらしいがボケてきてるから、との会話。それ以上は分からない。
スカイツリーの大きく見えるところのアパート。これがメゾネットタイプというのか、１階が台所、２階は２間続きの和室。壁には本がたくさんある。寝ながら読むのはフォークナー。姪が読んでたのは、パトリシア・ハイスミスの短編集。スナックのママ役は石川さゆりで、客の求めで日本語訳の「朝日の当たる家」を歌う。姪の名前はニコ。・・と小ネタがおもしろかった。
音楽だが検索したら、「演出効果のために平山が聞くはずのない音楽を使うこと」とヴェンダース監督が自らを封じ選んでいった、などとあった。そうなのか。う～ん、日本人は、平山は聴かない、という想定？ 見ながらは、いるいる、こういう音楽が好みのこの年代の男性って思ったんだけどなあ。
映画HP 音楽・本
https://www.perfectdays-movie.jp/collection/
姪のニコは「ヴィクター」の気持ちがわかる、と言ったと思うが、これはパトリシア・ハイスミスの「すっぽん」とある。これは読んだことがあった。結末はかなり恐ろしい。・・そういえばヴェンダースはパトリシア・ハイスミス原作の「アメリカの友人」を監督していた。
最後に流れるピアノだけの「パーフェクトデイズ」は
Patrick Watson 演奏のものだった。
2023ドイツ、日本
2024.1.23劇場で
使用曲 映画HPより
“THE HOUSE OF THE RISING SUN”
Music & Lyrics: Alan Price
Performed by The Animals 1964
“PALE BLUE EYES”
Written by Lou Reed
Performed by The Velvet Underground 1969
“(SITTIN’ ON)
THE DOCK OF THE BAY”
M+T written by Otis Redding, Steve Cropper
Performed by Otis Redding 1968
“REDONDO BEACH”
Written by Patti Smith, Leonard J. Kaye,
Richard A. Sohl
Performed by Patti Smith 1975
“(WALKIN’ THRU THE)
SLEEPY CITY”
Written by Mick Jagger and Keith Richards
Performed by The Rolling Stones
Published by ABKCO Music Inc.
“AOI SAKANA (BLUE FISH)”
Words & Music by Sachiko Kanenobu
Performed by Sachiko Kanenobu 1972
“PERFECT DAY”
Written by Lou Reed
Performed by Lou Reed 1972
“SUNNY AFTERNOON”
Written by Ray Davies
Performed by The Kinks 1966
“THE HOUSE OF THE RISING SUN”
Japanese Version
Written by Maki Asakawa
MUSIC: Traditional 1972
“BROWN EYED GIRL”
Written by Van Morrison
Performed by Van Morrison
“FEELING GOOD”
Written by Leslie Bricusse/Anthony Newley
Performed by Nina Simone 1965
“PERFECT DAY”
Written by Lou Reed
Performed by Patrick Watson
ウィリアム・フォークナー 「野生の棕櫚」1939
幸田文 「木」
パトリシア・ハイスミス 「11の物語」
