シェパード大槻

PERFECT DAYSのシェパード大槻のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
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何も起こらない鷹揚さ、昔の映画みたいでいいねぇー。簡単な楽しさを与えないことで、この映画自身をウチらにくれたんだよ多分。そういう抽象度。モテなくないが恋は無い、孤独じゃないが特に絆も無い、悲壮感無し多幸感無し、セリフも少ない、っていうこの映像に対して何を思うかは全然人によって違うだろうな。映画の感想を言うと自己紹介になってしまうという仕掛けだと思う。

人にあげるのは、本やカセットやカメラじゃなくちゃいけない。お菓子なんかあげちゃダメ。村上春樹小説の主人公型とでも言うべき内巻きの彼なので、多趣味にも関わらず創作活動や仲間作りはほとんどしない。でも、パティスミスであの子は泣いたし、11の物語にあの子は共鳴してた。彼の、趣味を純粋に遂行するある種の真摯さが子供にはわかるんだ。妹的な世界と平山的な世界を子供達だけが横断できる。権力やお金に侵されないものこそ文化芸術だって思います。

ランチタイムによく見る人、木と踊る人、隠れて文通する知らない人、こういう偶然の出会いがperfect daysですよね。この人たちとは大体何も起きないし起きても大したことにはならないんだけど、偶然そこにいることってなんかドリーミン。いつでもこんな衝突を待っている。

映像は正方形?でカットは短め、カメラはモノに近くて手持ちが多い、だからスマホで撮ったホームビデオみたい。それで、最後のシーンだけが長いカット、こことっても映画的。あれ名シーンですね。だって大人は全員自分の人生に泣き笑いしてるでしょ?

スカイツリーとおしゃれトイレについては、素人観光客の悪趣味な目線って感じで良くなかった。東京や the tokyo toiletのプロモーションとしては必要なんだろうけど映画の中では不自然に感じた。この違和感をきっかけに、本作は 外からの目線 を破らないのだなという印象を抱き、じゃあ、「微笑みの清掃員平山 というキャラクターもやはり外からの目線による空虚な理想的わびさびジャパン(もしくは空虚な理想的低賃金労働者)なのでは?」という疑いが出てきた。これを海外から賞賛されて日本人も喜ぶのでは、youは何しにニッポンへ的な褒められ娯楽やないか。

光と影、木漏れ日というキーワードがどのように作用しているか自分には分からなかった。→平山は、日々の少しの変化を見つめる人である。側から見たら同じ日々でも、彼は毎日違う夢を見る。