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枯れ葉のHALのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
5.0
北国におけるアルコール依存問題。ウクライナ侵攻。恋。

ひどい戦争!

感情が乏しいカウリスマキ映画、感情が出ると爆発力がすごい。上のセリフでわっと心掴まれて泣いた。ひどい戦争。

ウクライナ侵攻は特にフィンランド国民にとって全くひとごとではなくて、無視もできない、でもどうすることもできなくて、とにかく自分が食べていくのに精一杯で。そこに見つけるささやかな幸せ。それでいい、近隣で大変なことが起きていて、未来がどうなるかはわからないけれど、自分の人生を生きていこう、と肯定してくれるような。身近な愛を大切にしていくことで、平和に繋げていくような。そういう優しさに温められる。


アンサは犬の登場で表情がやわらぎ、最後のウィンク含めて、これだけ表情が出た登場人物は彼の作品では初めて観たかも?(全部見てないので、そうでもないのかな?)とても魅力的に感じた。
ワンコめちゃくちゃ可愛い。

カウリスマキはいつもファンタジーのような空間で、社会問題を提起していくけれど、今回のアルコール問題は北欧諸国の人々にとってはかなり身近な問題だと思う。身内をアル中で亡くした人、アル中の人、きっといっぱいいる。映画のように簡単に断てるものではないけれど(そこはファンタジーなんだよね)、さらりと寄り添う。

カウリスマキ本人もバーを経営していたはずなので(Kafe Moskva, 現在は閉店してしまった模様)、アルコールを断つストーリーはちょっと意外だったかも。ま、趣味でやってたんだろうし、人を不幸にする酒は出したくないだろうな。

暗く長い北欧の冬は、経験した人にしかわからない辛さがあるという。葉が落ちる季節に怪我したホラッパ、厳しい冬を迎えるにあたって、試練が待っているのはこれからだとも思う。

『街のあかり』ヤンネ・フーティアイネン、年を重ねてもかっこいいな。『希望のかなた』シャーワン・ハジも本当に少しだけ顔を出していて、なんか可愛い。『デッド・ドント・ダイ』は見たことがなかったので、アダム・ドライバーが友情出演?!て一瞬びっくりしたけど違った。笑

カウリスマキ、今回もありがとう。先行きの不安でいっぱいだけれど、あなたの優しさを胸に、生きていく。

2024/2/1 2回目鑑賞。愛おしい。染み渡る。Maustetytötの曲にすっかりハマり、訳してみたり、歌いたくてカタカナで書き出す始末。
本当に良い。2回以上見返して救われる映画は、私にとって最高の作品だなと思って、もうスコア5にした。その基準で他も見直しちゃお。
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