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関心領域のxoのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
3.0
アウシュヴィッツの隣で暮らす収容所長とその家族の話。
描かれるものよりも描かれていないものに想いを馳せさせる作劇手法は新鮮。遠景に映るものや遠くで鳴っている音が物語の文脈を作っていくため、映画館で見ないといけないタイプの作品。
音以外にも、奇妙な印象を残す演出の数々によって、なんとも言えない禍々しさが通奏低音のように流れている。
全編を通して自然な会話や日常が淡々と映し出されていて、一個人やその心情に焦点を当てるというよりは、"風景"として描いていることもあり、世界への没入度は高い。

アート映画的、静的な作りではあって、映画としての強度はあまり高くない。露悪性が弱いというか、強く感情を喚起させられる描写やシーンはない。長閑、優雅な日常との対比という意味でのコントラストはそこまで感じられなかった。終盤にいくに従って主人公が内に抱える空虚な感情が見えてくるものの、あくまでも突き放した描写にとどめている。

テーマも普遍的ではあるものの真新しさに欠けるところ。権力の周縁にあるもの、という意味ではいろんな物事や事象にあてはめられる構図がある。
作品内でもっとも悍ましい(発言をする)のは誰かってことを考えると、過去のこと、人ごとにはできないと思わされる。

字幕がフェードアウトするのはじめて見た。
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