YUSUKE@アイアンマンの人

関心領域のYUSUKE@アイアンマンの人のネタバレレビュー・内容・結末

関心領域(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

アウシュヴィッツの物語を逆に進む『時の矢』(絶版。これをよすがにこちらも是非何卒復刊を。『インターステラー』のクーパーの本棚にあった本の一冊。『TENET』のコンセプトの元ネタの一つ)のマーティン・エイミス原作。昨年お亡くなりになったので改めて追悼を。

取り急ぎなのですが、脚本で"Yiddish"(イディッシュ/ユダヤドイツ語)と指定されてたのを「ユダヤ語」としていたのは当代一の日本版字幕の名手たる松浦美奈女史としては意外(注:批判ではなく、理解してないとこの訳語にはしないはずなので尊重されるべきと考えてます。元の言葉自体サハラ砂漠みたいな重複表現なので)
配給・ハヤカワの担当者と訳文についてしっかり打ち合わせなさった結果なのでしょう。

Joseph Wulf - Zunenshtraln (Sunbeams / Raggi di sole)
(ヨセフ・ウルフ 『陽の光』)
https://www.youtube.com/watch?v=Kgs_a5QeKec

こぼれ話をすると、ユダヤドイツ語は『オッペンハイマー』にも言及があって、話者はロシア帝国(ソ連になる前の)のポリシェビキ革命さなかの虐殺(ポグロム)から各所に逃げてきた人たちという下地があります。(『キングスマン ファースト・エージェント』近辺の時代)
あのロケットの持ち主は先代がロシアからドイツへ逃れてきてついに収容所で虐殺されたというバックグラウンドが想起される。それもその持ち主が焼かれたであろうことも知らぬまま収容所長の子供はピアノで演奏してしまうのである。この皮肉。

その形こそ変われど虐殺の再現がかつての被害者(の子孫)の手により今パレスチナで起きているのは、誠に辛い話である。