へたれ

関心領域のへたれのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
3.3
良かったとこ1 企画のアイデア
アウシュビッツ収容所の所長を務めたルドルフ・ヘスの家族の物語という時点で、この映画の企画にフックがある。ホロコーストを行った「凡庸な悪」の周りにはその悪に無関心な家族がいて、その家族にとってユダヤ人は、まるで病原体か何かのように扱われていたというテーマ。さらにそのテーマを、事件そのものは見せず、音だけで画面の外で起きている光景を想像させるという、チェーホフ劇のようなアプローチ。
ホロコーストを扱った作品はいくつもあるけれど、これは独創的なやり方で良かった。

良かったとこ2 音響効果
音響効果で様々な賞を獲っているだけのことはあって、本当に効果音が主役の映画だった。
登場人物たちの会話とは何の関係もなく時々なる銃声が不穏だし、叫び声などを隠すためと思われる謎のエンジン音などのおかげで、どれくらいの距離で虐殺が行われているのかを体感できる。

ダメだったとこ ネタ切れが早い
せっかくのテーマなのに、開始から30分でネタが尽きてしまい、そのあとは同じネタを違った形で繰り返すようになってしまう。
具体的に繰り返されるのは、画面の上半分が収容所で下半分がお屋敷という並置のショット、ユダヤ人に触れた後は綺麗に洗うという衛生概念、「収容所の隣で」という前提がなければ平凡極まりない役人家族の日常会話、そして会話の背後で遠くに聞こえる銃声などの不穏な音。
短編映画だったら文句なしだけど、105分の尺でも長いと感じるくらいに中盤から停滞感が増す。
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