このレビューはネタバレを含みます
タイトルとポスターのビジュアルに惹かれ、以前から公開を楽しみにしていました。
恐ろしい映画を観ました。
何が恐ろしいって、別に登場人物達は作中で悪いことは何もしていない。普通に生活をしている。ただ壁一枚向こうの世界には「無関心」なだけ。
だからこそ自分と重ねてしまった。今ガザ地区やウクライナでは大変なことが起きている。それに対して最初こそ募金をしたり関心を寄せていたが、海の向こうで長く続く戦争に「慣れ」、今こうしてポップコーンを食べながら関心領域を観ていること。
映画を観ながら、そんな自分と重ね合わせてしまった。この映画について心が痛めば痛むほど、自分のさまざまな事柄への無関心さが露呈していくような気がして辛かった。
関心領域とはよく言ったものだと思った。
大人だけでなく、子どもたちまで慣れてしまっているのが怖かった。
悲鳴や怒号には一切触れずに珍しい鳥の鳴き声の話をしていたときはゾッとしましたし、りんごを奪い合った話を聞いていた子どもが怖がるのでもなく「二度とやるなよ」と言ったことにも震えました。
この環境は絶対に教育に悪いのに、「子どもたちは良い環境で育ってる」と自分の家のことだけを見てアウシュビッツ収容所の隣から離れようとしない母親。
全てが異様なのに、じゃあ自分だったら?と考えると慣れて無関心になっていくかもしれないと思えてしまうのも怖い。
きっとそれは人間が生き抜いていくために必要で自然なことなのだけど、そっと出ていった母(おばさん)のように、おかしいと思ったことに対して慣れてしまわないようにしたいと思った。
エンディングがとても怖かった。今まで聞こえなかった音や意図的に排除しようとしていた悲鳴をこれでもかと凝縮したような音。しばらく忘れられそうにありません。
人に薦めづらい映画ではありますが、観る人は絶対に映画館で見て欲しいと思いました。