Fumie

関心領域のFumieのネタバレレビュー・内容・結末

関心領域(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

画面に壁が映った途端、え、こんなに隣?と驚いた。そして暮らしの中に当たり前のように響く銃声や叫び声、怒号、重い機械が動くようなゴォォォという音、あんまりにも暮らしに馴染んでいる、残酷。
憧れの生活を手に入れそれを手放したくない妻、いちばん無関心そうで残酷な存在に見えるけど当時の女性たちの立場やWW1後のドイツの困窮などを考えるとそうなってしまうのか、何かの犠牲の上にしか幸せは成り立たないのか。夫の直接的な残酷さはもちろんだが妻の暮らしの中で垣間見える残酷な潔癖さもまた恐ろしい。子どもには罪はないが夜な夜な歯(多分処刑されたユダヤ人のもの)を眺めていたり弟を温室へ閉じ込め眺めている様子などはゾッとする。養育環境がこれでは倫理観もおかしくなってしまう。
歯にしても最初に衣類を選んでいた様子でもわかるけど、本当に相手を人間と思っていなかったんだな...こんなにも人の感覚は環境で左右されるものなのか、それとも人間てそもそもが残酷なものなのか。
見えない場所で恐ろしいことが起きているのにそれを見せられないまま音や言葉、暮らしの拘りなどでここまで恐怖を感じさせられるとは。

あとやはり動物は正直、犬が何かと落ち着きなく吠えたりする場面が多いのもリアルだなーと思った。お母さんは結局帰ってしまったけどやはり直接の知り合いが収容されているという現実があったからなのだろうか。普通の感覚といえばそうかもしれないけど離れることで物理的に見えなくしただけなんだよなと思うと今現代で起きている残酷な出来事を見ないように過ごすことの残酷さと重なる。
Fumie

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