おりん

愛にイナズマのおりんのレビュー・感想・評価

愛にイナズマ(2023年製作の映画)
3.9
前半は業界の醜悪さと理不尽さに追いやられ、後半はバラバラだった家族がぶつかり向き合いながら寄りを戻す展開。一貫性のないように見えるが、ストーリー全体を見ると、世の中の不条理にぶつかりながらも真っ直ぐな愛に満ち溢れた話だと思った。

序盤は、映画業界のプロデューサーと助監督の言動と仕打ちにずっとイライラしていました。しかもその言動がなんともリアルで。「理由や意味がなきゃダメ」「ありえない、普通じゃない」時と場合によるが、理由や意味を必ず持たせる必要があるのか。そもそも、普通って何なのか。そして、ものすごく腹たったのが人権を踏みにじるような言動。相手の意志や表現を否定し、傷つけていく行為。それが前半続いていたので、怒りが込み上げるばかり。

しかし、心が動き始めたのは中盤~後半。
花子は、10年振りに父と兄2人と再会し、不条理に怒り、本音をぶつけながら家族と向き合っていきます。最初は状況を把握しきれなかった家族も、想いをぶつけつつも、花子と向き合っていました。歪でバラバラだった家族が、徐々に寄りを戻していく様子が愛おしかったです。

後半は、家族が世の中の不条理にぶつかっていく姿や存在を確かめる姿にグッときました。居酒屋でのシーン。長男の誠一が「俺が行く!」と決意して向かうのがかっこよく見えた。ハグは存在確認。バラバラだった家族が、存在を確かめ合おうと対話してるのに家族の結びつきを感じて泣けました。

落合の胸の内をもう少し知りたかったり、携帯ショップでのやり方に無理を感じたりはしたものの、全体を通してグサグサ刺さる作品でした。個人的に「生きてりゃ、皆俳優なんだよ!」という言葉に共感しまくり。自分を守るために、何かをやり遂げるために偽ることって少なからず演じることはあるよなと。
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