おりん

かそけきサンカヨウのおりんのレビュー・感想・評価

かそけきサンカヨウ(2021年製作の映画)
4.3
淡々とした対話のなかで垣間見える人との結びつき、変化する友情、微かな恋心、家族の真実…。大きな出来事はないけど、対話の中で人物の関係性や抱える想いを繊細に描いていたのが良かったです。しかも、それぞれの人物がとにかく優しくて愛おしい。人間の温もりや繊細さが表現されていると思いました。

まず、再婚した相手や連れ子と仲良くできるのか…?家族になれるのか…?と序盤ちょっとハラハラしてたんですけど、陽は時間が流れていくにつれて自然と受け入れていたし、美子さんとひなたちゃんがいい人でほっこり。現実、受け入れるのも良好な関係になるのもなかなか難しいのかなとは思いつつも、互いに家族として受け入れているのと、理解して寄り添っているのがとてもいい関係だなと思いました。陽と美子さんのとあるシーンには、感極まりました。

あと、陽と父・直さんの距離感も良い。それぞれ包み隠さずちゃんと向き合っているし、互いに優しく気遣っているのが印象的でした。直さんが陽に、母・佐千代さんのことをちゃんと話していたのも良かったです。直さんが、実母へのわだかまりを抱える陽に真っ直ぐ向き合って伝えたからこそ、少しずつ陽のわだかまりも解けてきたのかなと。

陸や沙樹をはじめとした同級生とのやりとりも良かったです。家族との繋がり、恋愛や友情の価値観はそれぞれで、形は一定ではない。だからこそ、対話の中で気付きを得たり、相手の心情を理解し始めたり、想いの変化が生まれたりするのだと思います。価値観が違うことですれ違うこともありますが、互いに共有して分かち合える関係もいいなと感じました。

今泉監督、相変わらず対話のナチュラルな空気感、日常の些細な変化、登場人物の感情の機微を繊細に表現するのが上手いと思う。そして、柔らかな映像の質も好き。また、自分の中で大切にしたいと思える作品が増えました。
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