おりん

陰陽師0のおりんのレビュー・感想・評価

陰陽師0(2024年製作の映画)
3.0
役者陣のお芝居、授業のシーン、アクションは見応えあるものになっていたが、物語構成のバランスが悪いのと平安時代なのにバリバリファンタジーだったのがだいぶ気になった。

2001年公開の「陰陽師」も凄く良かったかと言われると…なんですが、平安時代の雰囲気や安倍晴明の妖艶さミステリアスさがよく表現されていました。しかし、今作は設定・演出・衣装・セットが良くも悪くも綺麗に纏まっており、呪術というより魔法じゃないか…?とかこれは平安時代の世界観なのか…?と疑問に思いましたね。

晴明と博雅の空気感も結構違ってて戸惑いも。こんな探偵っぽい感じだっけ?サスペンス要素が強いからかもしれないが。
博雅と徽子女王は従兄弟という設定だったけど、恋愛要素はなくても良かったかな。従兄弟としての深い繋がりを描いてくれたらさらに入り込めたかもしれないです。

今作は身分や地位のことに結構触れていたけど、その点の苦労を描いていたのは良かった。徽子女王が地位によって決められる人生に想い悩む様子、貞文が中年かつ百姓の苦学生で苦悩や焦りを感じる様子に、時代ならではの生きづらさが垣間見えたように思います。

あと、心理学を学んでいた身としては、何が現実で何が幻想(幻覚)か、我を忘れたときに混乱することは確かにあるよなと感じました。現実と幻想(幻覚)の境界線の危うさ。錯乱を起こすことで人生狂うこともあると思うと恐ろしいですよね。

CG演出は、全体的にとても綺麗でした。
花はちょっとCG感強めだったけど、他のCGはわりと馴染んでいたと思います。

キャストに関しては、メインの山﨑賢人・染谷将太は安定した芝居を見せていたものの、良さはあまり引き出されていない印象。
山﨑賢人は安倍晴明の浮世離れた動きや技の魅せ方は上手かったけど、「キングダム」の信のような正義感が滲み出ており、晴明像とは少し遠いように思った。
染谷将太は人間臭い表情を表現するのは見事だったけど、ちょっとやんちゃで気弱い感じは「ブラッシュアップライフ」の福ちゃんに近い感じで、もう少し迫真さが欲しかったかも。

今作で特に良かったのは、平郡貞文役の安藤政信と藤原義輔役の小林薫。藤原義輔と平郡貞文はおそらくオリジナルキャラクターであるが、この2人の存在が作品の世界観に深みを持たせたように思う。今作のMVP。

安藤政信は、見窄らしい姿で苦悩を抱える陰翳さと歯車が狂うような狂気じみた表情の二面性が強く印象に残りました。おそらく、年齢や身分による焦りから徐々に歯止めが効かなくなったんだろう…と気の毒に思う役を緩急ある芝居で魅せてた。2000年公開の「バトル・ロワイアル」を彷彿とさせるアクションにも注目。

小林薫は、出番が多くないながらもバックボーンやふと見せる思惑に説得力を持たせる芝居が素晴らしかったですね。「コタツがない家」「虎に翼」で魅せた人間臭さのある役柄とはまた違った魅力がありました。今作は説明台詞が多くてくどいのだが、小林薫が重心のしっかりとした芝居で成り立たせていたように思います。

帝役の板垣李光人も良かった。雰囲気や佇まいが絶妙で世界観にぴったり。ハマり役でした。村上虹郎に関しては、使い方が非常に勿体ない。彼は狂った役も人情深い役も巧いのに、なぜ魅力を引き出そうとすらしなかったのか。

色々気になる点はあったのですが、エンタメ作品としてはそこそこ楽しめました。サスペンス要素がもう少し練り込まれていれば、さらに楽しめる作品になったのではと考えています。

おまけ:自分は舞台挨拶ライビュ付き上映を観たのですが、舞台挨拶に関してはキャスト陣のほんわかわいわいとした雰囲気がとても癒しで最高でした。舞台挨拶は★5です。笑
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