演者の気迫あるお芝居、時に生々しく時に泥臭く時に儚く見せる画が印象的だった。ただ、内容としては今ひとつだと思ったし、市子にほとんど共感できなかったかな…。
市子の失踪後、第三者から証言を聴きとる展開は良かった。序盤では、生い立ちも素性も謎めいていた市子。第三者から市子との繋がりや様子を聴くことによって、市子の不安定さが伝わってくるのが強烈に印象に残りました。
ただ、市子がどんな人生を歩んで闇を抱えてきたかが掴めなかったために、話に入り込むのは難しかったです。戸籍がなかったことや家庭環境に恵まれなかったのは分かるが、市子の過去を断片的にしか知れなかったために、市子という人物を掴めなかったのが残念。
そして、自分は市子の言動に終始共感できませんでした。これは、周りが市子とまっすぐ向き合おうとしなかったのもあると思いますが、辛い人生を送ってきたのを込でも他人を振り回したり、無言で出て言ったり、さらには妹へのある行為。決して許されることではないと思います。
着地もモヤモヤ。ずっと幸せな時間が続いたら…って回想もあったけど、市子のことは擁護できない。まずは、市子の生活環境と犯した罪の問題提起をした方が良かったのでは。あと、母親の育て方についても触れて欲しかったですね。救いもなく、問題提起もぼんやりとしていて後味悪い作品でした。
でも、杉咲花をはじめ、キャスト陣のお芝居は全体的に素晴らしかったです。杉咲花に関しては、本当に凄まじかった。歪んだ感情と不安定さを表情できめ細かく表現していて、鳥肌立ちました。中村ゆりも素晴らしかった。後半のあの表情…育て方は擁護できないが、行き場のない感情が伝わってきて辛かったです。
