ささい

哀れなるものたちのささいのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.2
ちょーーーーーー面白い!24年ベストかも

自己という人間をまず掘り下げ、自己の集団たる社会への考察に移る。そして再び、社会という枠組みの中から自分という存在を見つめ直すような作品。
主にリスボンでは本能、船で理性、アレクサンドリアでは、上流階級から見る社会、パリにおいて貧民の社会を経験する。そしてロンドンに戻り、自分とは何者かを知り、そんな自分と他人の個の関係について考える。
覚えきれないほどに素敵な言葉が生まれ、メモを取れればと思うほどに様々な要素が散りばめられていた。
特にお金の下りは興味深い。
社会と倫理とは対極の世界で成長したベラが成長し理性を身につけた後も決して常識の枠組みの中に収まることはなく、常に探究の心を持って社会を生きていたのは必然である気がする。ある年齢まで社会を知らずに生きた彼女こそ真に万物に平等で、偏見というものを知らず、むしろ見る側の我々こそが様々なもの(主に倫理だろうが)に縛られている、縛られすぎていると少なくとも私は感じた。理性と本能の適切な塩梅を見つけて自由に生きるベラの姿に私は憧れた、

世界観が独特で、もちろん論理的なところもだけど、視覚的に美しい。さながらロココ時代よフラゴナール「ブランコ」を随所に思い起こす色彩豊かかつ、きめ細かい舞台演出。カメラワークと音響も独特で魚眼レンズと、不協和音の多用されたバックミュージックは常に見る側に違和感を感じさせた。

構成はさることながら、内容は皮肉的でもあり、非常にコメディー。そこら辺のコメディー作品よりもよっぽど笑える。隣の人に迷惑書けないように笑うのに苦労した
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