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哀れなるものたちのnntmkazuyotaroのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
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わたしは女性として生まれ自分でも自分のこと社会主義者だと自負しているので、ロールモデルとしてのベラが完璧だし、とても解像度の高い作品だと思いながら客観的に見ても「人生ってなんて安っぽいのだろう」と笑ってしまった。
それでも近年量産されているフェミニズム文脈の映画の何億倍もこの映画は心に刺さる。それは、あなたがあなたらしくいればいいというところに着地する作品が多い中、圧倒的にベラの様になりたいと思えるからだ。ベラの冒険が、女性が一人で地に足をつけて歩くことの困難と喜びに満ちていて見ていて飽きることがないからだ。
女に生まれたことを良かったとは感じなくても良い、たとえそれがわたしの自己満足でしかないのだとしてもそれでいい。この社会はキャンピーでしかないのかもしれないし、生きることもオナニーの様に思えるけど、“恥をかかない為”と教えられてきたことに蝕まれ破壊されないで、向上心と希望を抱いて常識よりも良心にしたがって死ぬまで自由でいようね。ベラを見ていると自然とそう思える。

時が経てば(もしくは繰り返せば)悲しみは薄れるし、喜びは使い古される。退屈は、人間が前に進む合図のよう。知ることへの好奇心、思考することの悦び、他者と関係の構築を試みること、ありのままの自分を愛すること、どれも諦めずにいたい。この社会で心の底からそう思えることがわたしにとっての幸せなのだ。
だからベラが、論理的思考を大切にしながらもタルトを好きなだけ頬張ったり、街の中で音楽に耳を傾けたり、ドレスを着て踊ったり、船の上で他者と呼べる人たちと議論するシーンが好きだし、中でも娼館で客に対して「小さい頃の想い出を教えて、次にわたしがジョークを言う」ってシーンがとても好きだった。たわいもない会話とユーモアで笑い合うこと、心と体とどちらかじゃなくて両方あった方が気持ちいいよねって話し。
友情や愛情を否定する訳ではないが、生理になった報告と恋バナをしないといけないことこそが女(女同士)にかけられた最大の呪い(プレッシャー)だと思ってるので、その二つの話しがまったくでてこないことが嬉しかった。あとベラの服が、Simone Rochaみたいでほんとにぜんぶ最高だった。

そんなわたしの視点はさておき、誰しもがベラに魅了されるよう仕掛けられた緻密で論理的で総じて享楽的な映画だったんじゃないでしょうか。

というわけで、幾度となく劇場でわたしの眠気を誘いちょっと苦手だったヨルゴスだけど、今回は映像美と衣装の素晴らしさ、エマ・ストーンとマーク・ラファロの演技でバキバキに目冴えた。
ただやや置いてきぼりな感が否めないのと、やっぱり相変わらずエログロ不穏不快ドヤっって感じがワケワカメで、シンプルにケリー・ライカートの方が好きだわ。(なんか支離滅裂な感想でごめんなさい)
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