リラリオ

哀れなるものたちのリラリオのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0
大好きなヨルゴス・ランティモスの新作「哀れなるものたち」を鑑賞。
自ら命を絶った不幸な若き女性ベラは、天才外科医ゴッドウィンの手によって奇跡的に蘇生される。こうして新しい存在として生まれ変わったベラは「世界を自分の目で見たい!」という強い欲望に駆られる…

・ロンドン《誕生、成長、支配、解放》
人生に絶望した女性が橋から飛び降り、自殺する。女性は子供を身籠っていた…
天才外科医ゴッドウィンは、死んだばかりのその女性の遺体を回収し「ある人体実験」をする。
それは体内の胎児を取り出し胎児の脳を女性に移植して蘇生させるという非人道的な実験だった。
こうして肉体は大人、頭脳は赤ん坊のベラが誕生する。
我が子同然のベラをゴッドウィンは屋敷に閉じ込める→「外は危険でいっぱいだ!」→ゴッドウィンは医学生マックスを助手として雇い、ベラの成長記録をつけさせる→精神と肉体がチグハグなベラに困惑しながらも見守るマックス→ベラは1日15の単語を覚え、2日で2センチ(だったけ?)髪が伸びる→ベラの知能は急速に成長、やがて「自分の目で世界を見たい」という知識欲を持ち始める。

いつしかベラに恋心を抱くマックス→ゴッドウィンは条件付きでマックスとベラを婚約させる→その頃、ベラは性的快感を知り、性に対する好奇心が芽生える→自慰行為を覚える→りんごスリスリ→「触りっこしよう!」ベラの誘いにクソ真面目マックスは「結婚するまで純潔守らんと…」断る。
放蕩者の弁護士ダンカンに結婚契約書の作成を依頼→ダンカン「こんな条件飲む女とは?一体どんな女なんだ??」→ダンカンはベラに興味を持つ→ベラに接触→「囚われ人の君を私が救おう!一緒にリズボンへ行こう!」ダンカンはベラに駆け落ちを持ちかける→その気になるベラ→「ダンカンと駆け落ちするぅ!旅から帰ったら鳩のように結婚するぅ」→もちろんマックスは大反対、しかしゴッドウィンはベラを手放すことを決意する。
こうしてベラは、外の世界へと旅立つ。

・リズボン《初めての世界を貧欲に吸収。快楽に溺れ、砂糖と暴力を知り、本音と建前を学ぶ》
リズボンに着き、セックス三昧→セックス=強烈ジャンプと教わる→初エッグタルトに大感激→1人でリズボンの街を探索→エッグタルトを吐くほど食う→美しい音色→罵詈雑言女に遭遇→ベラは酒、ダンスを覚え、退屈な世間話、恐ろしい暴力を目の当たりにする。
その頃ゴッドウィンは、ベラを失った悲しみから新たな人造人間フェリシティを誕生させるのだが…。

・船《様々な価値観を知り、探究心が芽生える》
他の男とイチャつくベラに嫉妬したダンカンは、ベラをトランクに閉じ込め、強制的にアテネ行きの船に乗船させる。
そこでベラは老婦人マーサとその連れ合いハリーと出会う。
自分と異なる思考を持つ2人に刺激され、哲学や読書の魅力を知る→ダンカンはカジノにどハマり→ベラの興味はセックスから哲学・読書へ移行→そんなベラにダンカンは「お前の可愛い喋り方が失われていく」→しかしフルシカトのベラ→子供のように無邪気なベラを好きなダンカンは、ベラの学びを妨害する。

・アレクサンドリア 《恐ろしい現実を目の当たりにし、絶望…》
ある日、ハリーに促されて、停泊したアレクサンドリアの街を見下ろす。
そこには貧困に喘ぐ民、為す術なく死んでゆく子どもたちの姿が…。
貧困を目の当たりにし、取り乱すベラ→「自分にできることは…」→船室に戻るとカジノで大儲けし、泥酔したダンカン→ベラは無造作に置かれた大金をかき集め、箱に入れる→その箱を船員に渡す→「これをあの人たちにあげて!」

・パリ《決別、自立、社会主義思想、お腹の傷は…》
一文無しになったダンカンとベラは、次の停泊地マルセイユで船を降ろされる。パリへ向かう→怒りが収まらないダンカン→ベラはパリの街を探索→とある娼館を見つけ、ベラはそこで初めて自分の力で報酬を得る→初給料でエクレアを購入→ダンカンの元へ→「エクレア…金どした?」→ベラが身体を売ったことを知り、ダンカンは激高→「何にも縛られないし、縛りもしないぜ!」と豪語していた自称自由人ダンカンだったが、すっかりベラの虜に…→「…うぜぇ…」→ベラはゴッドウィンから貰った金をダンカンに渡す→「お前金やるから、ロンドン帰れ!」ベラはダンカンと別離する。
生きるため娼婦として娼館で働くことにしたベラ。そこで社会を知り、様々な人間と出会う。やがて大学で医学を学び、社会主義の思想を深めていく。
そんな中、ある報せが届き…ベラは帰郷を決意する‼️

何者にも縛られず我が道をゆくベラと支配しようとするも、逆に翻弄され狂わされる哀れな男たち…
ダンカンよ…「俺は自由人、惚れるなよ!」って…本気になって、骨抜きにされてますやん!
空前絶後の大冒険は、くだらねぇ常識や規定概念をぶっ壊す爽快な物語でした。
プロデューサー兼主演のエマ・ストーン、めちゃ体張ってんな 笑
そして衣装と美術がマジ可愛すぎて…
ブリブリのフリルにどデカパフスリーブ、ルームウェアにナイトウェア、イエローのフリフリボレロ、黒コートにソックスとブーツ、ウエディングドレスなどなど…どれも可愛かったな…
ベラの部屋の刺繍の壁紙、ペニスの形をした窓枠、(壁の電気スイッチも女性器の形をしていた…あのヒラヒラは多分 笑)…やること細かいわ!もう観るところ満載で忙しかった 笑
ただヨルゴス・ランティモス映画のファンとしては、ちょっぴり物足りなさを感じてしまった。
私はやっぱり「アルプス」「籠の中の乙女」のあの奇妙で独特な世界観と無表情棒読み演出、なんともいえねぇ気持ち悪さがたまらなく好きなんだよな…
奇想天外でユーモアに溢れたとてもすばらしい作品だったが、何だか複雑ぅな気持ちになってしまった。
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