リラリオ

リリア 4-everのリラリオのレビュー・感想・評価

リリア 4-ever(2002年製作の映画)
4.6
 旧ソ連とスウェーデンを舞台に実際に行われているヒューマン・トラフィッキング/売春奴隷犯罪を描いた衝撃の問題作。

旧ソ連のうらぶれた街に暮らす16歳のリリアは、母とその恋人と一緒にアメリカへ渡る日を夢見ていた。
自由の国アメリカ!!夢と希望に胸を膨らませ、荷造りをするリリア。
親友のナターシャにアメリカ行きを告げる→「私、ママとママの彼氏とアメリカで暮らす!!出発は金曜日!」→「マジか…クソ、羨ま!!」→しかし…「ちと話したいことが…」→「何?」→「あとで呼び寄せっから…」→「えっ??ここで1人で暮らせってこと??」→「Yes」
なんと母は恋人と2人だけでアメリカへ行くと言い出す。
出発の日…
「お金は少し置いてく!到着したらまた送金すっからヨロシクぅ!ん、じゃあ!!」
母はリリアに別れを告げ、部屋を出ていく。リリアはすぐさま母を追いかける。
「待って、ママ!お願い、行かないで!私を1人にしないで!」
しかし、娘の悲痛な叫びは届かず…母は恋人とアメリカへ旅立ってしまう。

叔母のアンナがやって来る→「荷物早よまとめろ!新しいアパート行くぞ!」→「新しいアパート?いやいや…」→「口答えすんな!」→アンナに連れられ新居へ→到着したのは、ゴミだらけ激狭オンボロアパート→管理人「ここに住んでたじいさん、数日前に死んで…荷物そのままなんよ」→「こんなとこ住めるか!」→しかし、選ぶ権利などお前にねえ!文句があるなら路上で暮らせ!とブチ切れられる…

オンボロアパートに引越し→即不良のたまり場に→接着剤でラリパッパ→爆音で音楽をかけ、大暴れ→管理人に怒られる→男とイチャイチャするナターシャ→リリアは11歳の少年ヴォロージャに迫られる→「(゚A゚)ヤメレ!あんた子供過ぎるわ!」→翌日→アンナ「騒ぎを起こして…お前、わかってんだろうな?気をつけないと事態は悪化するよ!決めるのは全て私なんだから!」またまた切れられる。

ある晩、陸橋の欄干に腰掛け、高速道路を眺めているヴォロージャを発見する→「何してる?降りなさいよ!」→渋々降りるヴォロージャ→リリアは家に帰るよう促す→が「…帰れない。追い出された…今夜泊めてくれる?」→リリアはヴォロージャを泊めることにする→「…しゃねぇな、何もしねぇ約束だゾ!」→リリアはベッド、ヴォロージャはソファで寝る→ヴォロージャは告白する→「さっき…本当は飛び降りようとしていた」→「…何で?」→「この世界は全てデタラメ…だからもう生きたくない」ヴォロージャもまた毒親に虐げられ、孤独な日々を過ごしていた…

金が無くなる→母から連絡なし→管理人「捨てられたんじゃね?」→リリアは、ナターシャに誘われある場所へ→「…若い人ならまだしも老人は…」→「いやいや老人の方が早く終わっから!」→到着したのは…公然と売春が行われる激ヤバディスコ→女性は無料、金持ちおじたちが好みの女を漁る→ナターシャはおじと個室へ→リリアも誘われるが…誘いを断る。
ドンドン!!ノックの音で目を覚ます→「…誰??」→扉を開けると、ナターシャとナターシャの父親が立っていた→「お金返す!」→「へぇっ???」→「じゃあ!」→リリアに金を渡し、そそくさと立ち去るナターシャ、リリアを睨みつけるナターシャ父→「どういうこと??」
父親に金が見つかってしまったナターシャは、リリアが売春で稼いだ金を預かっているだけと嘘をついたのだった。
リリアは、親友に裏切られ、同級生には売春婦といじめられ、孤立する…

とうとう電気止められる→助けを求めアンナのもとへ→隣人「アンナ、引越ししたよ!」→なんとアンナは、リリアが母と暮らしていたアパートに引越ししていた→リビングでくつろぎ、テレビを観るアンナ→「…広い家に越せて幸せ?」→「わたしゃ年取ってるし、病気だから快適な家が必要なの!」→「ママから連絡は?」→「ないね」→「金ねえ…」→「私もねえ」→「電気も止められ、食べるものも…」→「働けば?」→「働くて…」→「母親のように体売れば?」
リリアは何も言わず部屋から出ていく。

電気のつかない部屋で、盗んだ酒とパンを食すリリアとヴォロージャ→「私さぁ、ブリトニースピアーズと同じ誕生日なんだよね…4歳違うけど」→「じゃあ、病院で取り違えられブリちゃんになった人生を想像してみてよ」→「いやいや、アメリカに住んでねぇし、歳も違うし…」→「でも、もしそうだったらめちゃクールじゃね?」→「まあ…確かに」→「ねぇ…僕の誕生日知ってる?」→今日はヴォロージャの誕生日だった→「おめでとう!プレゼントはもらった?」→「…」→「じゃあ…私がプレゼントをあげる。今日は無理だけど…必ず!」リリアは今は無理だが必ず素敵なプレゼントを贈るとヴォロージャに約束する。

役所から連絡がくる→「あなたのお母様から手紙が…あなたの親権を放棄すると…」→母からの手紙には「リリアは望まれない子で、もう彼女の保護者になることを望んでいない、あとは社会サービスに任せる」と書かれていた。
完全に捨てられてしまったリリアは、電車に乗り、ディスコへ向かう…
とうとうおじに体を売るリリア。

金を手にしたリリアは、食べ物とタバコ、そしてバスケットボールを購入する→バスケットボールをヴォロージャに渡す→「プレゼントするって約束したでしょ?」→「マジで!?ありがとう!」
→はしゃぐヴォロージャ→その姿を見て、微笑むリリア。
絶望の淵に立たされたリリアにとって唯一の拠り所はヴォロージャだけだった…

売春で日銭を稼ぎ、荒んだ生活を送るリリアは、ある日アンドレイという青年に出会う→お前、体目当てで近づいたんだろ!と警戒するリリア→しかし「ただ親切にしたいだけ」とアンドレイ→そんな優男に心惹かれる→もちろん嫉妬メラメラのヴォロージャ→「ヤリたいだけっしょ!」→「そんな人じゃないって…てか嫉妬?」→「してねぇよ!」
日に日に悲惨さを増す孤独な生活の中、突然目の前に現れた白馬の王子アンドレイに夢中になるリリア…
街を眺め呟く。
「…今ならママが出ていった気持ちが分かる…ここには何もない」

「一緒にスウェーデンに行こう!」→アンドレイの誘いに驚くリリア→スウェーデンに住んでいるアンドレイは、休暇でこの街に来ていた→「1週間後出発する。一緒に来るならアパートも仕事も紹介する!」→「…」→「この国はマジクソだ。それに比べてスウェーデンは楽園。人々は親切だし、ここで医師が1年で稼ぐ額を1ヶ月で稼げる」→「ウソだ…」→「ホントだって!ここにいる奴ら見てみろ、みんな狂ってる…俺のいとこは金がなくて腎臓を売った」
夢も希望もないこの街から抜け出す…一度は諦めた夢…

ヴォロージャのバスケットボールは、あたおかアル中親父にハサミで切られ、リリアはアパートに押しかけてきた同級生にレイプされる→「マジクソだ…とにかくここから抜け出す!」→リリアはヴォロージャに一緒にスウェーデンへ連れていくと約束する→「ここに1人で置いておけない…アンドレイに話してみる」

スウェーデンへ行くと返事する→「よっしゃ!」→「あと聞きたいことが…友達が…」→「その話は後で…後で聞くから」→♡→結局、ヴォロージャのことは話せず…→2人のやり取りを部屋の外で聞いていたヴォロージャ→「絶対騙されてる…仕事なんかねえぞ…アイツただヤリたいだけだ」→「そんなことない!」→「で、僕の話は?」→「…忘れてた…ちゃんと話すから…」→「つうか仕事って何?」→「野菜の…」→「冬に野菜は育たねえだろ」→「ワンチャンスウェーデンの方が暖かいかも…」→「スウェーデン、どこにあるか知ってんの?」→「だいたい…EUのどっか…」

結局リリアは、ヴォロージャの忠告を聞き入れず、偽造パスポートを入手し、ひとりスウェーデンへと旅立つ…心の支えを失ったヴォロージャは、絶望し自殺する。
スウェーデンに到着したリリア…しかしそこで彼女を待ち受けていたのは、非情なる現実だった…

リトアニア出身の少女ダングールの身に起きた事件を題材にした映画。
理不尽な現実、過酷な運命…
もう救いようがない。
そして、音楽の選曲とタイミングが…絶望的すぎて 笑
超シリアスなシーンでゴリッゴリのインダストリアル・メタル、ラムシュタインの「Mein Herz Brennt」が爆音で流れ、大切な話をしている最中に、t.A.T.u.の「ノット・ゴナ・ゲット・アス」…他にも、このタイミングでこの曲???つうのが多々あり…
物語の展開やセリフめっちゃいいのに、その良さをぶち壊す壊滅的な音楽センス …やはり音楽って大事なんだな…
あとは天使の羽がハロウィンの仮装グッズレベルにしょぼくて、そんなんだったらなくてよくね?と思ってしまった。
良作なのに、マジもったいなって感じの映画でした。
リラリオ

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