人間にとって好奇心は何よりの原動力だ。子供が元気に見えるのは、この世界に対する好奇心を持っているからだ。それが大人になるにつれ、世界を知るにつれて、好奇心は「知識」「常識」と引き換えに失われていく。好奇心を失った者は老いさらばえて、哀れな存在となっていく。
この映画の主人公・ベラは絶望の淵からゴドウィン＝ゴッドの手によってこの世に引き戻された。それは悍ましいエゴイズムの副産物ではあったが、それによって彼女は呪いから解き放たれた。生まれ変わったと言ってもいい。彼女はその目に映るもの全てに感動し、その飽くなき好奇心だけを胸に冒険に出る。何かに縛られることを嫌い、世の中の常識や倫理とされているものを疑い、どんな状況にあろうとも自分らしく生きようとする。世間知らずな彼女は一般的に見たら"哀れ"な女性に見えるかもしれないが、映画を観ていると実際に哀れなのは彼女ではなく、彼女を取り巻く周りの人々のことである事がわかる。だから「哀れなるものたち」なのだろう。邦題をつけた方、グッジョブ。
映像が全編にわたって美しく刺激的。ベラの精神を表すかのように世界の色彩が鮮やかになったりくすんだりするのが見事で、最初の束縛から解き放たれたベラに呼応するようにモノクロ映像がカラーになる演出は感動的だった。セックスシーンは流石にちょっと多すぎるかなとは思ったけど、それこそ倫理的に〜の象徴だから目を瞑ろう。
