ろく

哀れなるものたちのろくのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

こんなの嫌いにならないに決まっているじゃん。もう展開から結末までだーいすき!

まず観ていて思ったのは手塚治虫のメルモちゃんね。あれは手塚の屈折した性癖が出ているけど、本作品はヨルゴス・ランティモスの屈折した性癖が見事に出ている(ああ、困ってしまうじゃないか)。そして中盤は松浦理英子の「親指Pの冒険」や中島哲也の「嫌われ松子の一生」、そして最終的に「だから女性は勝つ」はそのまま大好きな城定映画の展開なの(城定の「悦楽交差点」はまさにこの映画と同じ顛末を迎える)。そう、非常に個人的で申し訳ないが僕の好み(性癖)とこの映画はものの見事とリンクするんだ、そんなの嫌いなわけないじゃーん。

しかもね、この映画は「メルモちゃん」より卑猥で「嫌われ松子」より豪快で、さらには城定映画よりこれでもかこれでもかで「お金」をかけている。そうだ、何が好きだってこの映画は僕が映画に求めているものをこれでもかこれでもかでアップデートしゴージャス!アウェイサム!ファンタスティック!と映画を見ることの快楽にまで結びつけている。映画としての哲学とひたすら金を湯水のように投下するエンタメがものの見事に融合しているんだ。もう一度言う。だーい好き!

さらにさらにだよ、主役のエマ・ストーンはとんでもない体当たり演技を見せてくれるんだ。おい、日本の木端女優たちよ。たかだかベッドシーンをしただけで(しかもノー乳首)何が体当たり演技だってーの。この映画を観てみろ!体当たり演技なんて恥ずかしくて言えないから。日本の映画だったらベッドシーンにチープな音楽までかまして「はい、いい感じでしょ」と流すけど(ここは場末のラブホテルかと突っ込みたくなる)この映画ではそんなシーンも愉快&痛快でなんとも人を食った演技をエマ・ストーンは見せるんだ。エマ・ストーンの妖艶+無邪気な演技を観ろ。それだけでもこの映画は十分の価値がある。

ストーリーも昨今の女性問題を逆手にとって「生きる」ことの快楽を教えてくれる。最後の人を食った終わり方とエマ・ストーンの微笑みに僕はスタンディング・オベーションが止まらないぜ。あの微笑みだけでこの映画は満点である。たしかに多少鼻白む人もいるだろうけど、城定映画をひたすら追い、ロマンポルノもひたすら追ってきた僕にとってはこれは日本のピンク映画の(目指すべき)到達点なんだよ。悔しい。なんで日本人はこんな映画で予算を集められないんだ。なんでピンクは、城定は低予算なんだ。ヨルゴス・ランティモスはなんでこんな映画を撮るのに資金を集めることができるんだ。ああ、ああ、ああああああ、くやしーーーーーーーーい!!!!

というわけで大絶賛です。141分があっという間。エマ・ストーンのひたすらな前向きがもう理由なしに全肯定してしまう作品でした。ブラヴォー!!!

※僕にとって一番納得いかないのは日本でこれをやれる女優さんがほぼいないのではということだ。確かに脱げる女優さんはいるだろうけど、ここまであけすけである意味滑稽な展開はない。日本だとみんな「綺麗に撮ろう」としている(セックスは所詮男性が女性の股を開いて乗っかるというある意味滑稽な姿なのにね)。おっとピンク映画はそれが出来る。でもメジャーでそれが出来ないのが問題なんだよ。

※ロードムービーであることもなんとも楽しい。しかもヨーロッパの都市の表情をそれぞれ見せてくれる。そこの見せ方に関してもヨルゴス・ランティモスの作為はあるだろうけど、そんなこと考察する前にただただ楽しんでしまった。どのシーンも「魅せて」くれるのだ。それが嫌いなわけないじゃないか。
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