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哀れなるものたちのナーオーのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0
"大人のおとぎ話"

ベネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞。アカデミー賞最有力とまで言われている本作。本作が作品賞を受賞するかはどうかは分からないですが、間違いなく傑作です。

『ロブスター』、『女王陛下のお気に入り』
などのヨルゴス・ランティモス監督。
特に最近はショーレース常連監督になりつつあり、一部からは本来の才能を犠牲にしてメジャースタジオに魂を売ったと言われているようですが、むしろ本作のような作品でこれほど監督の作家性が全面に出ていること自体が珍しいと思います。

もちろん本作は広い意味でフェミニズム映画です。しかし単なる女性を素晴らしさを描いたフェミニズム映画と言うのはあまりにも安易すぎる。個人的にはそれだけなフェミニズム映画は正直苦手ですが、本作はその奇怪なストーリーやSF(サイエンスフィクション)、ファンタジー的な作風に対して、テーマ自体はとても普遍的。だからこそ『ロブスター』みたいな難解さはなく、分かりやすく、楽しみやすい作りなので、これまでに観たヨルゴス・ランティモス監督作の中で一番好きな作品になりました。

文字通り体を張った演技と存在感。オスカーノミネートは納得の主演エマ・ストーンは言うまでもなくキャリアベスト級の名演。

冒頭からエンドロールに至る全ての場面が絵画のように美しく、観ているだけで楽しかったです。

"ヨルゴス・ランティモスのファニーゲーム"と紹介されて、なかなか観る意欲が湧かなかった『聖なる鹿殺し』も観てみよう… と思います……
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