たらお

哀れなるものたちのたらおのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

胎児の脳を持つ女性ベラが冒険を通じて大きな成長を遂げるお話。
「世界を知る実験」と台詞にありますが、今作を一言で表すならこれでしょうね。
新生児の目線で見る世界はあんなにも未知との出会い、発見や気づきに満ちていたのですね。
マックスに「美しい痴人」なんて言われていたベラですが、言葉を覚え「知りたい」という欲求を持ってから世界が色づいていきます。
序盤はモノクロの世界だったのが、冒険が始まってからカラーになっていく演出は映像作品ならではの魅せ方。
舞台が変わる時のカットシーンは「不思議の国のアリス」感があり大変好みです。

無垢なベラが旅先で格差や時代の偏見、果てなき人の欲望に触れ、たくさんのものを吸収していく構成なのですが。何も知らない、何にも染まってない彼女だからこそ見える、気づけるものがあるんですね。
街中でゲロを吐いたり、幼子を殴ろうとしたり、あまりにもストレートな物言いをしたり……
そんな常軌を逸する行動をしていますが、彼女自身は無邪気なだけなんですよね。
本能のまま、心の赴くままに行動し、そのたびに気づきを得て、学びにする。
この吸収していく姿は見習いたいと思いました。
常識や礼儀作法を知らぬが故にヒヤヒヤするシーンがありましたが、ベラは恐れずに飛び込んでいくんですよね。何にも縛られず、偏見も持たないことで道が切り開かれていくとは。
また、男女の営みのシーン《熱烈ジャンプ》が多数ありましたが、これは三大欲求に正直な彼女が急激に成長していく上で必要なシーンなのでしょうね。
子供に見せつける父親はどうかと思いましたが。

そんな旅の中で出会う女性たちはみなパワフルと言いますか、自分の芯をしっかりと持っている方で好感が持てます。
彼女たちとの出会いがまたベラを成長させ、彼女たちとの出会い、その場所でしか気づけないものが確かにありましたね。
マーサさんは特にお気に入りです。あの人もっと出番あってほしかった……
自分を曝け出す、裸になることを恐れないあの精神には憧れます。

ところで結局「哀れなるものたち」とは誰のことを指していたのでしょうね?
最初はベラとゴッドそれにマックスのことだと思っていたのですがどうやら違う気がします。
あらゆる生き物のこと? それとも向上、進歩、成長が見られない人間に対してでしょうか?
ラストシーンの将軍の姿、鳴き声から悲痛な感じがなく、もしや人のしがらみから解放されて喜んでいるのでは? と受け取ったそれがひとつの答えなのかもしれません。
また時間をおいて再観賞したいです。
たらお

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