こういちろう

春画先生のこういちろうのレビュー・感想・評価

春画先生(2023年製作の映画)
2.2
楽しめたけど、安すぎないか?と思った。コメディなので、細かいツッコミは野暮だと思うが、一応、物語の中心を成すのが弓子の芳賀への強い思いなのに、なぜ芳賀を好きになったのかが全く描かれていない。春画を好きになることと、芳賀を好きになることは別物だと思うのだが、いつの間にか両方が好きという設定になっており、少し強引過ぎる気がした。せめて最初から春画が好きで、その専門家である芳賀にも気持ちが向いていったという設定でもよかったのではないか。
春画はこの作品のベースではなく、単なるツールでしかなかった点が物足りなかった。映画として脚光を当てただけでもよかったのかも知れないが、春画の良さについての話は申し訳程度しかなかった気がする。つまり、この作品は単なるエロコメディでしかなく、そのあまりの馬鹿馬鹿しさに笑えはするのであるが、ナンセンスによる笑いなので、かなり安い笑いだなと思う。春画をモチーフとして、エロさを笑うという点は、映画の中でも語られているので、そういう意味では一貫していてよいのかも知れないが。
役者陣について、柄本佑のあのセリフ回しは演出なのだろうか。少し取ってつけた、いかにも柄本佑風な言い回しは少しわざとらしく、演技が上手くないと思ってしまった。コメディでも、もっと癖のない言い方でよかったのではないだろうか。内野聖陽は、はまり役だと思った。北香那演じる弓子のセックスシーンはあって当然の流れであるが、あの露出にはあまり必然性はなく、かなりの作為を感じ、話題作り、客寄せのためのようで、これも興醒めである。終盤の部分については、「ビールとワインの混ぜ物」も、例え映画の中の設定としても本物という設定にはできなかったのかも知れないが、偽物という設定とするなら、わざわざ描く必要はなかったのではないか。そしてあの趣味的行為は、それまで描かれていなかった要素なので唐突感があった。エロければよいというものではなく、もっと必然性が必要ではないか。
全体としては、いろいろ説明が足りてなく、とにかくエロくて面白くしたいだけの強引な作品という印象を覚えた。