三畳

犬王の三畳のレビュー・感想・評価

犬王(2021年製作の映画)
3.0
当時存在するはずのない楽器を用いた音楽で、路上ライブの盛り上がりを現代に翻訳して伝える実験的な映画の試みは、まさにインディーズからのし上がる二人のパフォーマンスが新感覚で市井の人々に衝撃を与えたことと同じだと思った!
文化や歴史、琵琶へのリスペクトを欠くことなく両立させたのはすごい!

ただ…声と曲調と絵とが絶妙に噛み合っていなくて、それぞれ単体では素晴らしい技術だと思うのに食べ合わせが悪いというか。
もちろん上述の通り異色の掛け合わせによる化学反応を狙ったのだと思うけど、飲み込めない。

なおかつそもそもミュージカルが苦手な私には、ついぞその世界観に慣れることなくライブシーンがかなり長く感じた。
ディズニーアニメがリアリティラインを保ってるのってすごいことなんだな。ロックって繰り返しだから、進んでいくストーリーを説明するのが違和感あるのかなあ。


あと、これは「美女と野獣」と同じ現象で、異形バージョンの姿の方が魅力的なビジュアルなのに呪いが解けて健常に戻っていくとなんかつまらない。感情移入が足りないのかな?

野獣は人間に戻ることを望んでたけど、犬王はすごく戻りたいってわけでもなさそうだったし。
しかも異形によって虐められたり不自由したことはあるけど、人間の姿に戻ったら即、心まで処世術に染まってしまったこともあり、
全部本人の意思の外なので仕方ないとはいえ喜びにくい展開だった。
三畳

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