元空手部

ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワーの元空手部のレビュー・感想・評価

4.2
フレームという最小単位で構成されている映画のショットを時折フレームの一部をはみ出した撮影法などを用いることで毀損する方法により、解体を招こうとしている。また、客体化に類する観客が講義に反応するシャットが幾度か挿入される。脱構築に近い、この映画内で実践性が良かった。

映画を見ていて、『羊たちの沈黙』がなぜ出てこないのか気になっていたが、終盤に紹介されて安心した。ただ、『羊たちの沈黙』は男性による最後の救出劇を排した女性による勝利を描いた点で画期的なフェミニズム的作品の側面もあると思うのだが。
また、『白い肌の異常な夜』の紹介がないのも気になった。あの映画でイーストウッドの男性的な側面は女性により客体化されていた。映画で紹介されるような演出法とは厳密に違うが、一つの派生として、根深い問題として象徴的ではないかと思う。
男女の安易な二項対立にとどめようとする点も気になった。本作において批判される男性とは所謂ファルスのことで、映画界に蔓延するファルスの自覚の有無こそが問題であり、そこに男女の対立はないように思えたからだ。

ハリウッド映画への批判として作られた本作で邦画の例を出すのは少々的外れな気もするが、橋本忍は80年代に『幻の湖』という画期的で今なお新鮮なフェミニズム映画を作り上げた。女性優位のセックスを、映画の技法を有効に駆使して表現した作品を私は他に知らない。カルト映画として笑い種にされているような、実際面白い作品ではないのだが、時間がある方はぜひ見てほしい。

しかし、なぜ字幕が女言葉なのかしら。こんな言葉遣いする女性滅多に見たことありませんわね。むしろ男性の私の方が女言葉みたいな話し方する時が多い。
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