元空手部

落下の解剖学の元空手部のネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

転落死を裁判の中で再現していくドラマ。転落死や転落死に至るまでの事象の再現が不可能な以上、何かしらの指標が用いられるわけで、本作でも指標による再現が行われているわけだが、そこに多言語などの複雑な工程が加わる。言うなれば翻訳を繰り返している作品。ただ、その翻訳とはN.グッドマン的に言えばあるクラスのみの指示に留まるものであり、裁判所に複数設置されているモニターなど、翻訳行為そのものに対する懐疑的な視点も同時に示されている。
ただ、夫婦喧嘩の音声をイメージ化するシーンは一際異彩を放つ。あの翻訳過程だけは指標を通じてではなく、メタ的な劇映画の再現=真として提示されている。メタ的には真である夫婦喧嘩のイメージだが、指標により再現されていないことで劇中の視点では真偽の判定が不能なイメージとなっている。この倒錯性が面白かった。
また、無罪判決のシーンを直接描かずに、インタビューでの発言に止める。裁判結果そのものすら翻訳されたものでしか提示されていない。常に宙吊りであることを求められている作品だった。
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