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ポッド・ジェネレーションのMrOwlのレビュー・感想・評価

ポッド・ジェネレーション(2023年製作の映画)
4.2
舞台は近未来のニューヨークなのですが、主演のエミリア・クラーク、キウェテル・イジョフォーは共にイギリス出身の俳優さんです。監督はフィー・バーセスとフランス出身の女性監督・脚本家というチームの作品です。エミリア・クラークはゲーム・オブ・スローンズの王女デナーリス・ターガリエンを演じブレイクし、ターミネーター:ジェネシス」では、サラ・コナー役に大抜てきされた俳優さんです。キウェテル・イジョフォーは、多くの作品に出演しており、「それでも夜は明ける」で英国アカデミー賞を受賞したり、ドクター・ストレンジシリーズのモルド役などハリウッドの大作などにも出演しているので、知っている人も多いでしょう。スマホやワイヤレスイヤホン、PCなどを現在と同じように使っているので、近未来は現代から数十年先という感じで、SFであるような別世界感がないのが、物語に入りやすくて良いと思いました。家の中にもテクノロジーが普及しアシスタントのAIが、朝食やコーヒーを用意してくれたり、ストレス度に応じてセラピストの受診や自然ポッド、というリラクゼーション用のポッドの利用を勧めてくれたりしています。レイチェルは仕事もバリバリこなすキャリアウーマンで、職場での評価も高いようです。アルヴィーは植物学者として教鞭を取っており、テクノロジーが普及し、植物もホログラム化され、自然と触れ合うことが極度に少なくなった若者たちに、実際の植物に触れることを推奨するなど、人工的なもの、テクノロジーの過度な進歩には抵抗感を感じている様子です。IT大企業のペガサス社は、持ち運び可能な卵型の《ポッド》を使った母体に負担のかからない妊娠、出産による子供を授かるサービスを提供しており、自身もハイテク企業に勤めるレイチェルは新しい妊娠方法に心惹かれます。一方、植物学者のアルヴィーは自然な妊娠を望んでいますが、あることをキッカケに、二人が、出産までの10ヶ月の間、《ポッド》で赤ちゃんを育てることを選択します。子宮の代わりに、卵型のポッドで受精卵が分化し、徐々に胎児が形成されていく中、二人の心境にも徐々に変化が生じていきます。ジャンルとしてはSF+ドラマという感じでしょうか。取り扱っているテーマはなかなかに深いというか、色々な意見があるテーマで、更にいくつもテーマがあるように感じました。女性の社会進出、人工授精や代理出産、妊娠・出産に関する女性の負担やリスク、AIへの依存、自然との隔絶など。レイチェルの考えに共感する部分もあれば、アルヴィーの考えに共感する部分もあるなど、人によって受け止め方が違う、色々な見方ができる作品かなと思います。展開としては少し読めてしまう部分もありましたが、「意外と面白い」と思える秀作かと。
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