山岡

座頭市兇状旅の山岡のレビュー・感想・評価

座頭市兇状旅(1963年製作の映画)
3.8
シリーズ4作目。

3作目からカラーとなった座頭市だが、前作では夜のシーンが多く、モノクロ時代とさして印象が変わらなかった。今作はオープニングからパリッと明るい色彩が展開される。さらに全体を通してほとんどが昼のシーンとなっておりカラーの美しさが際立っている。

また、前半の座頭市が町相撲に参加するシーンや後半のお祭り、さらにはクライマックスの大立ち回りなど、エキストラの数が格段に増えセットも豪華になり、画面のゴージャスさが一気に上がったように見えた。

ストーリーとしては、「下仁田のヤクザ組織の気弱な親分佐吉と元ヤクザが経営する旅籠の娘おのぶの恋」「2作目で市が殺した助五郎親分の兄弟筋?のヤクザに懸賞金をかけられる話」「そのヤクザに雇われた凄腕の浪人蛾十郎の女に成り下がった1作目のヒロイン、おたねと市の再会」この3つの軸が重なり合い、最終的には市が登場人物のほぼ全員から命を狙われるという、座頭市にとってかなり気の毒なものとなっている。

万里昌代演じるおたねさんは1作空けて登場。おたねさんの少し堕ちた姿が素晴らしい。無垢な娘っぽい雰囲気だったのが色っぽく退廃的に仕上がっていて、1作目の公開から一年しか経っていないにも関わらず、シリーズの時間的なスケール感を高めている。

あと、おたねさんの今カレとして出てきた蛾十郎。北城寿太郎という方が演じているのだが、三船敏郎の用心棒を丸パクリしたような演技が凄まじい。衣装やメイクだけでなく、喋り方から声色まで三船に寄せてきている。しかし「最初は三十郎みたいな豪傑かと思いきや、実は小悪党だった!」みたいな演出もない。何故モノマネをしているのか全く分からない、実に奇妙な存在だった。

あとクライマックスの大立ち回りは人数が多くて見栄えがいいだけでなく、殺しのバリエーションも多く、かなり見応えあり。

最終的には…おたねさんは蛾十郎に殺され、さらには蛾十郎の口からおたねが賞金目当てで市を罠にかけたと告白される(真偽は不明)市にとっては最低最悪なエンディングだが、祭囃子が聞こえ、道化のように踊り狂う市のハッピーサッドな表情を切り取ったエンディングがたまらない。
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