パピコ

月のパピコのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.0
相模原障害者施設で起きた事件を題材にしたフィクション。
相模原の事件を描くのではなく、事件の背景にある社会の課題について、監督からこちらに突きつけるような作品。

映画としてはずっと重たくカロリー高め。
不穏な空気も常に漂う。
演技達者な4人のメインキャストが、正論と嘘と、綺麗事、現実を、鋭い角度で切りつけてくる。

映画の話からそれますが。
相模原事件が起きた時に、僕自身が感じてたことが、マスコミの多くが犯人の人間性の報道。犯人がその考えに至ってしまった環境やさらに社会の構造へのコメントが少ないことは違和感でした。
コメンテーターの発言も綺麗事が多く、重度の障がいを持たれた方の支援の現場の実情を全く想像できてない人が多かったです。僕自身も知りませんでした。(酷い実情だからといって、あの考えに至るのは完全に間違いですが)

世間の人が施設内の支援の実情を知らないのは日本の障害福祉の歴史として、障がい者を社会から隠す、見えなくする施策が長くされてきたせいだと思います。(自宅に閉じ込めるのが良しとされてた時代がありました)
実際生きていく中で、障がいを持つ人と社会活動を共にした覚えがある人は少ないと思います。しかし障がい者手帳を持つ人は936万人。人口の7%。クラスに3人はいる計算になります。

そうした社会から見えない存在として扱われてきた歴史があり、日本人の多くは「障がい者=関わり方がわからない存在」として、より遠ざけてる印象があります。
関わってみたら、とてもユニークで楽しいんですけどね〜

この映画ではそこの潜在的な障がい者への差別意識に気づける作品になってます。

障がい者が当たり前のように社会生活ができるようになってほしい。
この映画はパンドラの箱を開けたような作品ですが、障がい者を受け入れる社会作りの一歩になる作品だと思います。
障がい者の方がイキイキと活躍する社会ってみんなにとっても優しい社会になるはずなんですけどね。

色んな人に観て考えてほしい。そんな作品。
石井裕也監督の気概を感じる。
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