すおう

遥かな時代の階段を 4K デジタルリマスター版のすおうのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

2023/8/22、シネマジャック&ベティにて鑑賞。

前作は雰囲気を楽しむための作品だったが、今作は傑作と言って良い。
戦後横浜の歴史を背景とした、大岡川を巡る物語。
最近はだいぶマシになったが、かつての大岡川沿道はちょんの間なども立ち並び、ヤバかった。
黒澤明『天国と地獄』の地獄の側である。
物語はもちろん架空のものだが、川が犯罪に利用されていたとしてもまったく不思議ではない。
この映画がつくられた頃の横浜は、みなとみらい地区の開発がある程度進み、ランドマークタワーやインターコンチネンタルホテルも建設済みだった一方、みなとみらいから山下公園に至る辺りはまだ手つかずで、赤レンガ倉庫は廃墟も同然、伊勢佐木町や黄金町周辺にはヤバさが漂うという、アンバランスな状態であった。
「横浜は変わった」というセリフが何度か出てくるが、まさに変化の真っ最中だったのである。
そういったもろもろの風景を取り入れて、戦後の影が日本から消えて行くさま、戦後を生きた人々が居場所をなくしていくさまが見事に描かれていた。
ラスボスというべき「白い男」の居場所へ主人公を誘うのがメリーさんであるのも、ポイント高し。
横浜の人間なら、説明不要で納得できる。
(横浜以外の人にはこれで通じるのか?なんでポッと出のキャラが居場所を知っているんだ、とか思わないのか?…と疑問を感じるが)
クライマックスの舞台は港周辺の再開発前の地区であるが、この辺りも本作から数年後には観光地化していくのである。
なお、ラストの母娘が別れる場面の駅は、黄金町ではなく日の出町(だと思う)。
まだ未見なので、三部作の最後がとても楽しみ。
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