すおう

ノベンバーのすおうのレビュー・感想・評価

ノベンバー(2017年製作の映画)
4.8
2023/01/19 横浜シネマリンにて鑑賞。
これは大傑作!
エストニアの映画なのだけど、東欧映画っぽい。
(エストニアは分類的には北欧とはいえ、ウクライナやベラルーシの北で、ヨーロッパの東端に位置するから、不思議ではないかも)
より具体的にいえば、チェコ映画っぽさがあります。
『マルケータ・ラザロヴァー』の生活感にシュヴァンクマイエルが入り込んだような。
(『マルケータ』のようなスケール感はありませんが)
これほど嘘くささがなく、民話的伝承世界と現実世界が混在する映像作品を他に知りません。
モノクロ作品なのがそのリアリティに多いに貢献していますが、その映像の美しさといったら!
土俗的オカルト譚であり、悲恋物語であり、宗教説話であり、同時に詩的でシュールレアリズム的な映画でもあります。
ジャンル分けは野暮ですね。
わかりやすい映画ではないと思いますが、旧ソ連圏の映画にありがちな晦渋さとはほど遠く、娯楽としても楽しめるレベルにまとまった良いアート作品です。
原作が読みたいところなのに、日本語訳はないんですよね……。
国書刊行会の世界幻想文学大系に収められると似合いそう。
2017年製作とのことですが、日本公開が遅すぎます!
こういう作品をもっとどんどん配給してほしい、と願ってやみません。
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