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Fair Play/フェアプレーのBATIのレビュー・感想・評価

Fair Play/フェアプレー(2023年製作の映画)
4.6
すっごく面白かった!ヘッジファンドの熾烈な生存競争。婚約したことを隠して同じ社内で働くカップル。女性/エミリー(フィービー・ディネヴァー)がポートフォリオ・マネージャーに昇進し、功績を出せない男性/ルーク(オールデン・エアエンライク)は解雇候補になっていく。二人の関係性は狂っていき...。
「アシスタント」を観た年にこんな映画を観れるなんてすごいめぐり合わせと思う。出世できないルークはエミリーが出世したのは上司への枕営業/愛人関係にあると疑うのだけど、それは疑いというより「自分が出世できないのに彼女が出世できるのは」と自分の能力不足を認められない、彼女を正当に評価できないから。とにかく自分に自信がないので詐欺みたいな通信教育に高額を払って人身掌握力を身につけようとするなどとにかく必死で職場にしがみつこうとする(その理由ものちに明らかになる)。
逆にエミリーは努力家で昔からレポートがNYタイムズに掲載されたり分析力がとてもあるのをボス(エディ・マーサンめっちゃくちゃ良かった。もっと評価されて活躍してはしい)に純粋に評価されている。で、突然大昇進したものだから精神と仕事が乖離していき、ティピカルな男性の管理職のような振る舞いをしていくのがキツい、それが面白い!

パートナーであるルークに対してもやたらとセクシストな態度をとるようになったり、そして上司としてルークを見る、それが人間的評価になっていく。ルークは見下されていると感じどんどん行動も異常になっていく、とまるで「es」での囚人役と看守役的な様相ともいえる、役割が人間性を方向づけていく。

悲しいかな責任があればあるほど仕事は疎かにできないエミリーと認証欲求だけが肥大していくルーク。自己評価ができないルークがヘッジファンドの世界でやっていけるわけはなくて、その自分を見ようとしない男性の描き方がとても鋭かった。いやしかしオールデン・エアエンライクの崖っぷち証言マンの歪み具合すごかった。とてもハン・ソロ演じた人とは思えない。

女性がこれだけ血も涙もない業界にいたら、男性性を内面化していかざるを得ないということも描いていて、業界批判であると同時にフェミニズムの話としても高いレベルの作品だと思える。後半性暴力のシーンはあるので女性は注意なさってください。

人を選ぶラストだなあとは思うのだけど、私は「カッコつけてんじゃねぇよ」と完全に同感だったので私的にはキレッキレのラストですっごく良かったな‼︎
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