ほかげのツクヨミのネタバレレビュー・内容・結末

戦後の闇を克明に映し出す闇のライティング。
予告編にてやばそうな戦後感が際立っていた本作を見てみた。
まずオープニング、BGMの迫力と真っ暗すぎる部屋で人が寝ている描写をディゾルブさせていく。戦後すぐのあばら家のボロボロ感と全然陽が差し込まない闇の照明に飲み込まれるみたいなやばいビジュアル。
まあそんな始まりからほぼ説明ないんだが、戦後すぐ売春宿みたいなものをしてなんとか生き延びている女性、そしてそこにやってくる男たちの日常をただ見ていく。なんとも重苦しいというか、戦後の貧困社会が産んだ人間たちがまあ怖い。ドスが効きすぎた演者たちもすごいし、もはや下手なスリラーホラーより怖い映像がただ続いていく恐ろしさよ。
そしてちょっとした温もりが形成されたと思ったら、PTSDを患った男により一瞬で破壊されるストイックさ。戦争は終わった後も殺伐とした無法地帯を産む、終わったのに終わっていない戦争の狂気と恐怖に恐れ慄く映像体験になった。
あと脚本の構成というかマジで全編売春宿かよと思わせる前半と、そこから出された子どもが戦後社会を探訪するが如く展開する後半もまた秀逸。「戦争が終わったんだ」と呟く森山未來の慟哭もまたエグいし、子どもが展開を牽引する肝になっているのもまた良い。戦後すぐの日本をリアルに炙り出す怪作であり、タイトルの"ほかげ"も赤黒い照明を見事に表現した良い題名だ。