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ほかげのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

ほかげ(2023年製作の映画)
3.5
塚本晋也監督がプロデュース・脚本・撮影・編集を兼任した意欲作で、終戦直後の日本を舞台にした反戦ドラマ。
ベネチア国際映画祭NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)受賞。
(2023、95分)

戦争で家族(夫と子ども)を亡くし半焼けになった小さな居酒屋で体を売りながら暮らす女の前に、食べ物を盗んで暮らす戦災孤児や金のない若い復員兵が現れる。
やがて少年はテキ屋の男から仕事を与えられ、一週間行動を共にすることに…。

~登場人物~
・女(趣里):ヒロイン
・戦争孤児(塚尾桜雅):空襲で家族を失う。拾った銃を持っている。
・復員兵(河野宏紀):元教師
・中年(利重剛)
・優しそうな男(大森立嗣)
・テキ屋の男(森山未來)

「終わった。戦争が終わった! 」
(→理不尽で非情だった上官を痛め付けたり、殺したりすることで、個人の心の中にある戦争は本当に終わるのだろうか?)

「戻ってこれなかった兵隊さんは恐い人になれなかったんだよ」
(→フランクルが「夜と霧(ドイツ強制収容所体験記)」の中で、同じようなことを(「善き人は戻って来なかった」と)言っている)

「あなたはそんなものを持たないで生きていくの!」
(→闇市の雑踏に消える少年に言葉が届くことを祈る)

少年の起用と趣里の好演が成功の一因。
人間の中に潜む暴力性を少年の目も通して描いているせいだろう、塚本監督作品に特徴的な過激描写を極力抑えている。それでも、臨場感は健在。
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