歴史ものを贅沢に予算と時間を使って魅せてくれる作品はやはり良い。
近年で既にそうであるし、今後このような作品を新作として劇場で観る機会は、どんどん貴重なものになっていくものと思われる。
私は幼少時、レゴの「南海の勇者」シリーズや「お城」シリーズに夢中になっていたクチである。
冒頭からぶっ放される大砲やそれを浴びる帆船、兵隊の衣装や手に持つ小道具たちがモロにその世界観。
子供の頃に想像を働かせるしかなかったバトルを、リアリティをもって目の前に示してくれた。それだけでもありがたい限りである。
同時に鉄の玉が飛んでくる恐ろしい光景、大砲ぶっ放した後に歩兵や騎兵が突っ込む当時の戦術、氷に落ちていくロシア兵などなど、ワクワクするとはとても言えない凄惨なシーンも数多い。
ワーテルローの戦いでイギリス陣が敷く、騎兵を方陣で迎え撃つところは見応えあったなあ。
マリー・アントワネットのギロチンシーン(ここはリアリティが逆にエグい)から始まる本作。
英雄ナポレオンが時勢を捉えどんどんと登り詰めていく様を見るのだが、当のナポレオンが野心に燃えてバイタリティを撒き散らすような、ギラついた様子が一向に見えないのが面白い。
馬を射抜かれる最初の戦闘にしても、行動は勇敢そのものだが怯えたような息づかいなんである。
その後もあまり表情に変化が表れない。
そして、男どもを従えて戦争を重ねる将なのに、周りに描かれる男たちは全然重要な位置付けをされない。
本作で大切な登場人物は、極端に言えばナポレオンとジョゼフィーヌだけなんである。
一目惚れして追いかけ、浮気をされれば戦地から舞い戻り、責めてたと思ってたらいつの間にか逆転されてるナポレオン。
世継ぎを産めないことが原因で離婚に至るが、その別れと共にナポレオンの転落も始まる。文字通り「運命の女」なのである。
先述の通りナポレオンにギラついたものがなく、その上で描かれるジョゼフィーヌとの関係。英雄譚としては非常に暗く内向的で、そこで示されるナポレオンの戦争で命を落とした人々の数の多さに陰鬱な気分になる。
ナポレオンに限ったことではないが、世界史の登場人物はあまり物語の世界で触れることなくここまで来た。
事前のキャラクターイメージがそこまでないまま観るのはなかなか新鮮である。
改めてフランス革命→ナポレオンあたりの歴史を学びなおしたいと思った作品だった
