のほほんさん

ノッキン・オン・ヘブンズ・ドアののほほんさんのレビュー・感想・評価

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この作品も懐かしの作品としてリバイバル上映されるくらい、時が経ったのだなあ。

曖昧で適当な記憶ではあるが、本作が公開されたのと似たような時期に「ラン·ローラ·ラン」とか「バンディッツ」とか「es」とかが公開されて、ドイツ映画に新感覚が!みたいな感じになっていたような気がする。


電車の中でもタバコ吸ってたり笑っちゃうくらいのセクハラがあったり、まあ確かに懐かし映画になるくらいの時が経過したのは分かる。
それ以上にこの頃の「新感覚」が、いまやレトロな風合いを帯びているのがなんか少し寂しい。致し方ないのだが。


死を目前に控えた2人が自棄になり、怖いもの知らずで突っ走り、マフィアと警察の両方から追われるようになる。
しかし、双方の追手がアホ(笑)
その結果多くの銃弾が放たれるのに怪我人が出ない、至って平和な逃亡劇。ちなみにマフィア側の追手の1人がモーリッツ·ブライブトロイで、彼がもう少し安全運転をしていたら本作はこんな展開にはならなかったはずだ(笑)


成り行きで犯罪者になった彼らに、いつしか世論も味方する。
そして何よりも、大ボスのルトガー·ハウアーも味方する。なんですかあの水戸黄門みたいな役割は(笑)


死を目前にしつつもそこに悲壮感はなく、どこかユーモアにも繋がってる。いつしか2人が固い絆で結ばれ、文字通り運命共同体となる。自棄になった結果の物語でありながら、その最期はもの悲しいながらも爽やかで美しい。


それにしても、島国に住む人間からすると海を見るのはさほど特別なことでもないのだが、ヨーロッパだと海を見たことない人ってのもそれなりにいるのだろうか?
ハンブルグ港とかあるよね?


海は生命が生まれたところ。
そう考えれば、天国で皆が海の話をするのも分かる気がする。海から生まれ、海に帰っていく。


見終わった時に、死にゆく彼らと自らを重ねるようになっているのか、自分の「生」がどこか希薄になるような感覚を覚えた。
その浮遊感がまた本作になんとも言えない美しさを与えているように思う。


劇場で観れて、とても嬉しい。