だいすけ

恋人たちの予感のだいすけのネタバレレビュー・内容・結末

恋人たちの予感(1989年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

そのへんのチープなラブコメとは一線を画する作品。ユーモアのセンスも第一級だし、その上どことなく洒落た雰囲気。

男女の友情は成立するか。男女の健全な友情を信じるサリーに対して、ハリーは「セックスを意識するから成立しない」という。男女が体の関係を持った場合、それは大抵、恋仲になったか、もしくは疎遠になる前兆のどちらかなので、友情は壊れる。そして、恋仲になることには破局のリスクが伴う。サリーと関係を持ったことをハリーが後悔したのは、友情が失われることを恐れたからだろう。「魅力的なのにセックスしたくない女性は君が初めてだ」という台詞は、安直なセックスで親友を失いたくないという意思の表れだ。

それでも、観ているこちら側が焦ったくなるほど長い年月をかけて、最終的には友情と愛情が両立しうることを証明する。シーンの転換点でたびたび挿入された老夫婦へのインタビューは、男女の出会いと愛には様々な形があることを示し、ハリーとサリーの関係性を相対化している。二人は最悪の出会いを経て、友人になり、そして互いのことを理解し尽くした親友のような恋人になった。

なによりラストシーンが粋。ハリーが「サンドイッチの注文に一時間半もかかる君が好き」等、サリーの欠点も含めて全てを愛で包み込む。それに対してサリーが「I hate you.」と言いながらキスをする。この「I hate you.」は、ハリーの台詞と対応関係にある。サリーが挙げたのは、どれもハリーがもともと嫌いだった点だ。それを裏返して愛を伝えたのだから、同様にサリーの「I hate you.」は「I love you.」の裏返しと容易にわかる。この一連の流れが完璧すぎて憎い。
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