だいすけ

ゴジラ-1.0のだいすけのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
5.0
死ぬほど面白い。いや、ほんとに「死」を肌で感じるくらいリアリティがある。今までみたどの映画よりも映画館で観てよかったと思える。ジュラシックパークやジョーズを模範とした迫力の出し方、過去作品へのオマージュ演出、戦後という舞台設定。

なによりゴジラと人の距離が近い。「シン・ゴジラ」のパノラマ感とは対照的で、人の視点からみたゴジラの恐怖をひしひしと感じる。これはCGでなければ実現しえない。海で後ろから迫ってくるゴジラは怖すぎる。普通に人が噛み殺される、踏みつぶされる。従来のゴジラにはなかった、人間の生活と地続きになったリアリティ。第二次世界大戦が歴史の一要素となってしまった現代において、当時にも現在同様に人々の生活ひいては人生が確かにあったと認識させられる。それゆえ、本作では当時の風俗の描写に力点が置かれている。

放射熱線の表現は従来と一線を画する。エネルギーの衝撃派によって建物は粉砕し、立ち尽くした人は吹き飛ぶ。あまりに生々しい。この点はまさに戦争の悲惨さを教訓とする意図が見受けられる。本来、1954年の「ゴジラ」も原点は反戦・反核にあったと思う。70年のときを経て、改めてこれを胸に刻み付ける。また、戦争の被害者とその遺族にとって、あるいは世界平和という観点で歴史を後世に伝えていく使命を「僕の中で戦争は終わっていない」という言葉に見て取れる。

クライマックスは、ゴジラのテーマが流れるタイミングが絶妙で、胸が高鳴る。久方ぶりの興奮を味わえた。

長らく「ゴジラ」の主役はゴジラだった。本作もそうといえばそうだが、明確に人類にとっての脅威として描かれ、同情の余地が微塵もない。肉食動物のように、生存のために獲物を狩るでもなく、ただ破壊の限りを尽くす。もはや戦争の怨念とでもいうべき凄み、まさに絶望の化身。
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