RRRi

市子のRRRiのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
4.0
感情移入して涙が出てしまった。
しばらくの間は杉咲花ちゃんみると泣きそうだなぁ。それくらい市子が離れなくなる。

他の俳優さんも全員が、演じているとは思えないくらいに役に入りきっていて、「この人の演技ちょっと...」みたいなストレスゼロ。

市子の感情が、表情からもすごく伝わってくる。死んだような目をして感情を無くしている姿、幸せを噛み締める姿、どれも心に刺さる。
顔が映ってなくても、首筋の動きで悲しさが伝わる。表現力の高さにこちらの心を動かされる。

社会的に許されないことをしているのだけれど、その背景にはどうしようもなく苦しくて辛い過去があって、いろんな視点から明らかになる市子を知れば知るほど、味方になってしまう。

生活環境が違うことで子供の育ち方がこんなにも違う様子がこずえちゃんとのシーンで明瞭になる。
あんな産まれ方でなければ、と思ってしまう。

新聞配達のききちゃんとのシーンで
自分の過去をちらっと話しかけたのは、
誰にも言えず、自分は夢なんて見れる人間ではないと思う反面、ききちゃんなら受け止めてくれるという期待だったのかな。

暗闇の中で一筋の光を見つけ、
とにかく今を生き抜く市子を応援したくなった。

個人的に市子と市子の母が鼻歌で歌う「にじ」が印象的だった。
この歌の歌詞は雨が降っても、そのあとには雲が流れて光が差し、そこに虹がかかる。ような内容からの、サビで
「きみの気分も晴れて、きっと明日はいい天気」とくる。

市子の母も市子も、どんなに雨が降ってても、きっと明日はいい天気。鼻歌を歌いながらそう言い聞かせ、今を生きていたのではないかなと感じた。

光を見つけてからの市子はとにかく強かった。

時には男を利用してでも。悪魔と言われても。全ては生き抜くために。
キタくんは市子のヒーローになれたかな。
キタくんには申し訳ないけど、市子はどうにか今もどこかで幸せに生きていて欲しい。

かつて幸せな生活もあったのよ。と市子の母が語る思い出の中にお味噌汁が映るところがとても切なかった。

フィクションとはいえ、社会問題が散りばめられている内容でもあった。
もう一度観たい。
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