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市子のasobunのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
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 愛した人の不可解な過去、彼女は何者なのか。ありがちな設定だか、そこに貧困、ヤングケアラー、家庭内暴力、性被害、社会のネットワークからは容易く外れてしまう事、法律の不備による無戸籍など、現代社会の負の側面が描かれている所が良い。それは身近な問題であり、それ故に可視化されづらい問題なのだと感じる。
 市子の元カレと共犯者の男の、自分が市子を救う事出来るという使命感みたいな感じに傲慢さ、悲劇性の共有に存在意義を見出している所に気持ち悪さと身勝手さを感じてしまった。市子を救える?のは法律の改正っていう現実的な問題なのでは?と。だからこそ、市子は逃げ、共犯者には犠牲を強いたのかなと思う。ただ、過去を何も聞かず、店を持ちたい、一緒に叶えようとする友人には素直に従う市子の欲望への忠実さが本来の市子の姿の様に見える。
 主演の杉咲花が兎に角良い。自分の存在感を目立たせず生きる市子、暗い印象はあるが、笑ったり、たまにツッコミを入れる時の市子とのギャップがあり、惹かれる。
普段から明るい役柄が多い様な印象があるから、正反対の役を演じた時により魅了的に映るんだろうなと思う。ただ自分の好みとして、明るさより暗さや負の部分に魅了を感じがちではあるが。
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