現実には起きているが、見るのが辛く、思わず目を背けたくなる苦手なテーマです。
このようなテーマを扱った場合、とにかくお涙頂戴な展開に持っていき、人の良心に訴えかけるのですが、この作品は二人の役者さんのおかげか、そういう展開ではないのが特徴。
まず市子役の杉咲花さん。
自然で出る明るい大阪弁と、ふとした笑顔。これが自身の出生や虐待を受ける過去をより闇深くさせます。
杉咲花さんは雰囲気はなんだか、岸井ゆきのさんに似てて、笑顔はきれいだし、何より性格の良さが滲み出る役者さんです。
感情を殺し、笑顔をみせながらついにその糸が切れた時の絶望は、体全ての負のオーラが放出されるようで、自分の心に突き刺してきました。
その市子を愛するのが、義則役の若葉竜也さん。
若葉さんは他の作品でもそうなんですが、自然でまっすぐな人物を演じさせたら右に出る人はいないのではないのでしょうか。
作品全体がモヤモヤした闇に覆われてる分、若葉竜也さんの放つ光が唯一の希望として作品を輝かせてくれます。
あってはならない。
ただそれが起きてしまう現実。
目を背けず、義則のように光を与え続けられる人になれるか?
自分に問われた気がしました。