間違いなく名作。
この作品の特徴はオッペンハイマーという科学者を中心に物語を展開させたこと。
彼の前にあったのは、物理学の講義であり、核の実験であり、夫婦の日常であり、不合理な公聴会であり、実際の戦争ではない。
日本に原子爆弾が落とされたこと、数万の人が亡くなったことを聞くだけで、この映画ではその具体は表現されません。
アカデミー賞は取りましたが、作品全体で過度な政治メッセージは語っておらず、また公開後のインタビューを見る限り、クリストファー・ノーラン監督は、解釈は鑑賞者にまかせ、敢えて一人の科学者の生き様を淡々と描かたかったのでしょう。
日本を描かなかったのも、あくまで彼が見た世界に日本はなかったからでしょう。
キリアン・マーフィー演じるオッペンハイマーは派手さはなく、強くもない。
しかし真っ直ぐな眼差しや、時折見せる不安な顔、核実験のシーンで花火を見るような無邪気な顔だったのが印象的だった。この場面、音が消える演出も鳥肌立った。
ただ広島、長崎という言葉が会話で語られることに抵抗感を感じる方もいるかもしれません。自分も見ていて、やはり日本人として辛い部分もありました。
また上演時間3時間もあること、途切れない会話が続くこと、時系列がバラバラのため見るにはパワー必要です。
ただもう一度みたい。
いや何度でもみると思います。
歴史的な名作です。
※追伸
自分はIMAXでは鑑賞してませんが、この作品はIMAXでなくても全然楽しめると思いました。