しゃび

市子のしゃびのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
5.0
「好き」ってなんだろう。
どういう感情なんだろう。

どうしようもなく絶望的な物語なのに、
「好き」という言葉がたくさん出てくる。

でも、この映画に出てくる好きは、
感情というより意思表示に聞こえる。

「うちお祭の焼きそば好き」

好きを表明しないと、好きがなくなってしまう。心地よい瞬間がなくなってしまう。

だから「好き」とスタンプを押す。

でも本当に本当に大好きなものは、
簡単に「好き」と言えない。

この気持ちは好きと言うのだろうか。

安易に好きと言ったら、他の好きと一緒になってしまうから。


いい映画は簡単に人を救わない。
このまま全く救われないんじゃないかってくらい救わない。

たまに本当に救わないで終わる映画もあるんだけど、この映画には絶妙に人を掬い上げるところがあり、まんまと泣かされました。

杉咲花、若葉達也の2人をいつまでも見ていたい。

「男と女と車が1台あれば映画は作れる」
と、ゴダールは言ってたけど、男と女と良きシナリオと演出のある、素晴らしい映画でした。
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