IMAO

陽炎座 4Kデジタル完全修復版のIMAOのレビュー・感想・評価

4.0
鈴木清順は若い時に何本か観たけど、あまり好きになれなかった。今も決して好みではない部分はあるものの、この作品には圧倒的な作家性がなせる技を感じました。
映画作家には二種類の作家がいると思っていて、映画を撮りながら考える作家、そして既に頭の中に映画の完成形がある作家だ。もちろん、大抵の映画監督はその両方を行き来するのだろうが、鈴木清順は間違いなく後者の作家だと思う。(ジル・ドゥルーズが彼の映画論『シネマ1&2』の中で「身体の映画」と「脳の映画」という分け方をしていたが、鈴木の映画は「脳の映画」としても捉えられるかもしれない。)
全ての画と音は鈴木清順によってコントロールされているが、この映画の中でコントロールし切れていないのが松田優作と原田芳雄という二人の俳優だ。もちろん、清順の手腕によって可能な限りコントロールされているが、この二人は鈴木の引力権から少し離脱していて、それがこの映画に良いバランスを与えていると思う。
泉鏡花が原作で未読だが、印象的な台詞もたくさんある。「夢はどうして覚めてしまうの?覚めなければ夢でなくなくなるのに…」まさにこの映画そのものを言い当てたような台詞だ。
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