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雁のIMAOのレビュー・感想・評価

(1953年製作の映画)
4.2
この映画大好きなのですが、実はDVDでしか観たことがなくて、今回やっとスクリーンで観ることが出来ました。1953年製作。森鴎外原作、豊田四郎監督作品。

明治末期の東京の下町に住むお玉は、飴売りの父親と貧しく暮らしている。お玉は出戻りで、肩身の狭い思いをしている。そこに知り合いの叔母さんから結婚の話をもちかけられるが、実はその相手も妻子ある男だった。父親が世話になり、やっと貧乏から抜け出せたお玉だが、妾として暮らす日々。目には見えない呪縛に不自由さを感じていた。しかし、毎日の様に家の前の坂を散歩する岡田という医学生と偶然知り合い、お玉は岡田に恋心を抱く様になるのだが…

とても小さな話だが、サスペンスに満ちている。一番巧いな、と思ったのは妾であるお玉が、正妻と出会うところ。彼女たちは同じ柄の日傘を持っている。それでお互いが妾と正妻であると認識するのだ。それを台詞でなく画として見せるのが、正に映画の脚本であり演出なのだと思う。

ちなみにこの『雁』は1966年に池広一夫演出、若尾文子主演でもリメイクされていて、これも甲乙つけ難い名作です。脚本はどちらも成沢昌茂のモノでほとんど同じですが、演出によって細かいところが違っていて比較してみるとなかなか興味深い。僕はどちらも大好きなのですが、高峰秀子主演で、池広一夫が演出したバージョンというのも観てみたかった気もします^^
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